2023年11月19日 講演会「タラブックスの最新の絵本づくり」

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ページ番号4001825  更新日 2023年11月28日

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11月19日には、インドの出版社タラブックスから、ギータ・ウォルフ氏にお越しいただき、「タラブックスの最新の絵本づくり」と題してお話をいただきました。
開催中の展覧会「館蔵品展 展覧会のちょっといい話 絵本と近代美術のあれこれ」では、タラブックスのコーナーもあります。近年日本でもハンドメイド本などが大変人気のタラブックスですが、当館との関係は15年前にさかのぼります。2008年、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアでラガッツィ賞を受賞した『夜の木』を、同年夏に当館で開催したボローニャ展で紹介したのがその始まりです。2013年にはタラブックス代表のギータ・ウォルフ氏を招聘して、イラストレーター向けのワークショップ「夏のアトリエ」を行いました。それ以降、タラブックスと当館の関わりは深まり、2017年には展覧会「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」が実現し、大きな反響がありました。2019年にも、当館のリニューアルオープン直後にギータさんが講演会をしてくださいました。

そんなわけで、ギータさんにはこれまで何度も当館にお越しいただいていますが、パンデミック後は初めてということで、今回の講演会では近年手掛けた本についてお話を伺いました。
最初に取り上げたのは、「The Women I Could Be」 という本です。作者は、土地を持たない農家に嫁いだ若い女性です。女性が自由に行動できる環境ではない中で暮らす彼女が、豊かな想像力によって自分がなりうる女性たちの姿を、明るくエネルギッシュに描きました。フェミニズムの活動家の出会いから始まったタラブックスらしい1冊です。
最新作「Seed」は、パンデミック中に農場に引っ越したというギータさんが、種を様々な面から捉えた絵本です。この中には4種類の開き方をするページが折り込まれており、本の形や開き方にもこだわる同社ならではの驚きの造本です。さらに、ワルリー族のアーティスト兄弟による絵をシルクスクリーンで印刷されており、本書からはタラブックスの本作りの醍醐味がたっぷりと味わえるでしょう。
『時をこえて 一針のゆくえ』には、環境問題に対する同社の関心が表れています。本書は、フランス人のアーティストが黒いビニール袋に絶滅が危惧される植物を刺繍した作品を元に作られたもので、インドの女性たちと刺繍のワークショップをするなど、この本からさまざまなことが展開しているそうです。この本を出版したからといって、すぐに環境問題が解決するわけでないけれど、多くの人にこの問題について問いかけ、考える機会となるだろうとギータさんは言います。
そのほか、海外のアーティストの絵を古い活版印刷機で刷った本や、インドの職人たちの仕事と彼らの声をまとめた本のシリーズなど、2020年以降もタラブックスらしい新たな本が生まれていることが伝わってきました。ギータさんはいつも軽やかでユーモアを交えながらお話してくださいますが、社会や環境に対して毅然とした考えを持ち、斬新なアイデアで本作りを続けています。今後の出版活動も楽しみです。

今回の通訳は、建築家でデザイナーの齋藤名穂さんにお引き受けいただきました。齋藤さんは、2013年の「夏のアトリエ」を受講し、その後ラブックスから本を出版し、彼らの活動をよく理解されています。「夏のアトリエ」のときから、いつも日本の人とのコミュニケーションを手伝ってくれているという優しい齋藤さんのおかげで、ギータさんもリラックスしてお話してくださったようです。

なお、表参道のギャラリー5610では、タラブックスとスタジオ・トルスタによる、インドやスコットランドの伝統的なものづくりを紹介する展覧会が開催中です(11月26日まで)。

講演会風景1

講演会風景2

講演会風景3

講演会風景4