広報いたばしテキスト版(令和4年4月2日号)2面・3面

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ページ番号1038523  更新日 2022年5月2日

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技術を磨き、伝統をつなぐ

 様々な分野で活躍する区内在住の職人たち。
 伝統を守りながら新しい挑戦を続ける、区登録無形文化財技術保持者2名に、伝統工芸への想いなどを伺いました。

手描友禅

江戸時代に活躍した扇絵師・宮崎友禅斉が創始した技法。染め着物製作の構想から仕上げまでの工程を一貫して行う。単彩のなかにも粋な風合いを感じさせるのが特徴。

寺澤 森秋
昭和21年長野県長野市生まれ。38年から山岸半翠に師事、40年に上京。平成17年に区登録無形文化財手描友禅技術保持者登録。令和元年に厚生労働省「現代の名工」受賞。区伝統工芸保存会会長を務める。

研鑽を積む そこに終わりはない

憧れを抱き修業の道へ

 小学生の頃、同級生のお兄さんが近所で着物の糊付けの仕事をしていて、そこによく仕事の手伝いと絵の模写練習に行きました。着物は出来上がるまでに様々な工程を経るのですが、糊付けは割と最初の工程です。手伝いをする中で、様々な模様の下絵や色付けなどをする仕事に興味を持ちました。なんとか頼み込んで、日本橋の模様絵師に弟子入りしました。
 下働きの頃は、具体的なことは何もさせてもらえず、もっぱら使い走りでした。毎日、自転車に反物を積んで、染色関係の工房が多い早稲田・目白あたりをよく走りました。今思えば、いろいろな職人さんの元を回ることで、仕事を見て覚えていきました。午後9時に仕事が終わってから、枕元で模写をしたり、仕事中に見た技法などを真似てみたり、そこからが自分だけの練習時間でした。

好奇心を持って作品作りに邁進

 師匠の工房で見習ったことを受け継ぎながら、自分なりに新しい技法を取り入れてきました。ご依頼の仕事もやりつつ、自分の持てる技術を全てつぎ込んだ作品作りも行います。染めの技術は日本だけでなく世界中にありますから、友禅との融合に挑戦するなど、技術の研鑽は尽きることがありません。
 お客様からいただいた要望には、苦労しながらも喜んでもらえるように、全力で応えてきました。生地に付けた蝋や糊を洗い流して作品が完成したときが、お客様との喜びの瞬間です。
 こうした技術の奥深さを少しでも知ってもらおうと、看護学校・郷土資料館などで体験講座を開いたり、小学生の前で話したりする機会も増えました。自分の興味や好奇心を突き詰めていく人が増えることを願っています。

表具

布・紙を張って仕立てる掛け軸・襖・障子などのこと。家庭用品・美術品など、扱う対象は多岐に渡り、細かな手作業で新調・張り替えを行う。

石塚 裕
昭和20年群馬県前橋市生まれ。35年から豊島区にある板垣表具店で修業を始め、同年に父親が経営する石塚表具店に入店。53年に店を継承し、現在に至る。平成24年に都伝統工芸士・30年に区登録無形文化財表具技術保持者登録。

次の世代に可能性を託していく

日本一の表具師をめざして

 父の仕事を小さい頃から見ていて、手仕事はもちろんのこと、お客様と接するときの態度・所作に至るまで、職人はかっこいいなあと思っていました。子どもの頃の作文に「日本一の表具師になる」と書いたこともあります。
 職人は「見て覚えろ」という世界。長い下働き中、ずっと見ていると、自分もやってみたくてうずうずしてくるんです。ある日ついに「ちょっとやってみろ」と言われたときは、緊張よりもうれしさが勝っていました。
 やがて一人で仕事をするようになっても、一人前になったということではありません。教わった通りにやっているはずなのに、先輩・師匠がいないとうまくいかなかったりするもので、ここからがまた勉強の毎日です。技術というのは磨き続けなければならないのだと心底思います。

新たな可能性に挑戦

 我々の仕事の出来不出来は、自分ではなくてお客様が決めるものです。「ありがとう。良かった」をいただくことが全て。職人にとってのお客様は、可能性を開いてくれる存在でもあります。プロの目線で見ると技術的に無茶なご要望をいただくこともありますが、裏を返せばそれは、プロでは絶対に思いつかない発想。無理と決めつけずに、試行錯誤することが、新しい発見を生むんです。「素人は何もわかっちゃいない」という態度では、技術もそこで止まってしまうと思います。
 跡を継いでくれた息子は、現代的な感覚を取り入れることに挑戦しています。美術大学などの学生とのコラボレーションなど、異なる専門分野の人たちが刺激し合う様子は、頼もしいです。生きた技術を磨いていくことが、伝統を次につなぐことだと思います。
注:登録無形文化財とは…無形文化財(工芸技術などの無形の文化的所産で歴史的・芸術的価値が高いもの)のうち、区が公共的見地から保存に努めるべきものとして登録したもの

板橋区伝統工芸保存会

 伝統工芸の実演・体験や工芸品の展示など、伝統工芸を伝える機会を増やすため、平成16年に同会が発足されました。区登録無形文化財技術保持者が多く在籍しており、代々伝わる技法を使い、伝統工芸品の魅力を紹介する活動をしています。
注:会員・作品など詳しくは、下記リンクをご覧ください。

問い合わせ

生涯学習課文化財係 電話3579-2636

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政策経営部 広聴広報課 広報係
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