板橋第六小学校(令和8年6月11日訪問)
教育長訪問記
6月11日(木曜日)に板橋第六小学校を訪問しました(128回目の訪問記)。
今回は、玉川大学の佐久間裕之教授から、ぜひ板橋区の進めている授業スタンダードSの授業を視察したいとのリクエストにお応えし、授業見学と研究協議会を行ったものです。
佐久間教授は私の前職(大日向中学校校長)の頃からお世話になっている研究者です。当日は同大学の学生さんも11名お越しくださいましたが、教員を目指している学生さんも多いとのことで、熱心に授業を観察していただきました。
授業は5年生の理科の授業(秋葉指導教諭)で「植物の発芽」の単元です。前時までにインゲンマメの種子が発芽するには水・空気・温度が必要であることを、実験を通して学んでいます。本時の問題は「植物の種子が発芽するには何が必要か」で、インゲンマメ以外のさまざまな植物の発芽をインゲンマメと比較して考察するというものです。
授業の冒頭で度肝を抜かれたのは、上記の問題を黒板に書いて先生がめあてを説明するのではなく、児童を教卓の近くに集めて12種類の種を見せて「どんな問いを考えますか」と児童に聞いたことです。考え付いた児童は席に戻って一人一台端末に入力します。問いを先生が提示するのではなく、これらの種を見て本時は何を探究するのか、児童自らが問いそのものから考える授業です。この手法は秋葉指導教諭が得意とする技法だそうで、授業開始からわずか1分で児童は理科の世界に引き込まれていきました。このような授業の仕方に2年前から慣れている児童ということもあるそうですが、児童の集中力が一気に高まり課題に取り組んでいきました。
先生は、本時の問題をどのように表現したらよいか決めかねている児童には声掛けを行い、丁寧に助言していました。本時の問題が理解できたところで、仮設の設定、実験へと進んでいきます。見ていると下の写真のように、一人で取り組んでいる児童もいれば、2人で、4人で相談しながら進めている児童もいます。授業スタンダードSの一つの形態です(SはSelfとSelectのS)。
理科室の黒板には、下の写真のように、理科における学びのプロセスが掲示されており、探究的な学習を通して、知識・技能だけでなく思考力・判断力・表現力を向上させる工夫がなされていることがわかります。
本時では、発芽の条件はインゲンマメと同じか違うか仮説を設定し実験していくのですが、沢山の種類の種があることで、一人では全てを実験するのは困難で分担をするなどの協働的な学びが促進されるよう工夫されています。先生は教室を回りながら対話と声掛けを行っていますが、個々の児童の学びの過程は端末に入力された情報で把握できますので、理解が進んでいない児童には積極的に声をかけていました。
授業スタンダードSは、児童が自己選択、自己決定、自己調整すること、つまり児童に委ねる場面を設定しますが、それは放任ではなく、先生は個々の児童が学んでいる状況を確実に確認しながら、必要な場面では適宜助言指導を繰り返していきます。個別最適な学びと協働的な学びが並立して推進されていくのです。
秋葉指導教諭の学習指導案には下の写真のように、児童に何をどの程度委ねるのかの指標が記されていました。これによると「課題」「過程」「形態」の3つの視点で「先生が率先して決定」(0)から「子どもに全て委ねる」(10)の10段階で表示することになっていますが、本時は全て10になっていました。たしかに、授業の冒頭から、先生の指示で授業が進められるのではなく、児童が自ら何に取り組むのかを考え、どのような実験をすれば仮説が検証されるのかも考え、誰と一緒にどのように実験をするのかも自分たちで決めていました。児童に何年か経験させてこのような状態に到達しているとのことで、2年前の3年生の時は先生が丁寧に指示するところから始めたそうです。
視察をしていただいた佐久間教授からは「板橋第六小学校におきまして、秋葉先生の大変すばらしい授業を参観させていただき、誠にありがとうございました。ゼミの学生たちも初めて拝見する授業光景に大変な刺激を受けておりました」「子どもたちの活動や表情、秋葉先生と子どもたちとのやりとりから、生きた授業に居合わせる喜びを実感いたしました」とのお言葉をいただきました。
本校の授業のような、児童が自己選択、自己決定、自己調整できる授業(板橋区授業スタンダードS)により、自ら主体的に学ぶことができる児童が育成されます。「子どもを真ん中に据えた教育」のモデルとなるような授業を見ることができましたので、このような授業が区内に広がってくれることを期待しています。
(記・長沼豊教育長)
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