大人が楽しめる絵本のまち

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ページ番号1038909 

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取材日時:令和4年4月14日

「On the table」と「世界の書棚から」が4月より本格的に始動します。そこで、板橋区立美術館館長の松岡さんと、板橋区立中央図書館職員の笹岡さんに本事業が始まった経緯や企画への思いなどについて話を聞きました。

写真:取材風景

「On the table」について

絵本の編集者を講師にお招きし、一冊の絵本が完成するまでの過程や、とっておきの制作秘話をお話しいただく講演会シリーズ。

Q.4月上旬より申し込みが始まっていると思いますが、申し込み状況はどうですか。

募集開始から2週間で、定員の半分に達しています。4,5月開催分を同時に募集していますが、以前から楽しみにしていた方は、募集開始と同時に4,5月分両方申し込まれていました。

Q.第1回、第2回は満員でしたか?

第2回までは定員が15名で、満員でした。今回は定員が30名に増えていますので、これまで申し込みができなかった方も参加できると思います。

Q.「On the table」の企画は、どんなところから着想を得たのですか?

(松岡)現在板橋区が推進している「絵本のまち板橋」は、作り手の方たちにも着目した内容となっています。そのひとつとして、絵本がどのようにして作られたのか、絵本を作る際に使用した資料を見ながら理解を深めてもらう機会があったらいいなと思いました。

この企画の特徴は、基本的に編集者に講師となってお話しいただくことです。絵本の講演会は作家が講師となって自分の作品について話すことが比較的多いですが、「On the table」では、絵本の作り手の中で、普段あまり注目されない編集者にお話を聞くことができます。

それを思いついたのは、美術館のボローニャ国際絵本原画展関係で多くの作家や編集者とお話ししていると、やはり良い作家と良い編集者が組むと良い絵本が生まれると感じたからです。その組み合わせはとても大切だと考えていて、良い作家でも編集者とうまくいかないと、出来上がった絵本の内容が伝わりにくかったり、絵本としての完成度が高まらないことがあります。

ですが、編集者の仕事は、あまり一般の方には知られていないのが現状です。編集者は作家と密に連携を取り、多くの仕事をしています。例えば、編集者が作家に対して原稿やテキスト、イラストの修正アドバイスをしたり、場合によっては絵本のテーマそのものを編集者が考えて作家と話し合うこともあります。

そして、そうした作業は資料として残っていることが多いのです。「On the table」という名前は、絵本を作るにあたって生まれた原稿や資料類を机の上に並べて、それを見ながら参加した皆さんと一緒に、どのようにして絵本が作られたのかがわかるような機会にしたいという想いから名づけ、この講座が生まれました。

Q.本の作り手側の仕事の中にも様々な種類があると思いますが、その中で編集者の影響力は大きいものでしょうか。

(松岡)そういって間違いないと思います。もちろん、編集者以外にもデザイナーやプリンティングディレクターなど、素敵な絵本を完成させるためには様々な方が関わっています。しかし絵本が生まれる最初から最後まで作家と一緒に走り抜けるような役割を担うのは、やはり編集者です。

Q. 過去に開催された「On the table」 は2回とも全く内容が異なり、編集者の個性が感じられて大変面白い内容でした。

(松岡)1回目と2回目は、方向性が違う方に講師をお願いしました。作った絵本も、1回目は日本人作家のもの、2回目は翻訳もので絵本の作り方自体がそもそも異なっています。

「On the table」はその回ごとに編集者に、資料を見せながら絵本の作成過程を話していただきます。編集者がその専門性とネットワークを活かし、作家、イラストレーター、翻訳者、デザイナー、印刷・製本業などの間で、トータルコーディネーターとして絵本作りに携わっていることがよくわかるようなお話を伺えると期待しています。

Q.参加者の反響はどうでしたか?

(笹岡)編集者が絵本制作の裏話を話してくれる講演会はまだあまりないので、初めて編集者の話を聞けて面白かったと好意的な意見が多かったです。

Q.「On the table」毎月1回開催されるとのことですが、どのような展開をする予定ですか。

(松岡)計12回開催しますが、内容が偏ったりしないように、12回全て違う出版社にお願いしています。中央図書館とともに企画をしました。

今後開催予定のものの絵本のタイプとしては図鑑や翻訳物、テーマもしかけのある本や教育本、生活習慣を学ぶ本であったりと、内容の違いなども含めて非常にバラエティーに富んだ本を選びました。

また、基本的には新しい本(2000年代以降のもの)を選出しています。子どもの本というのは割とロングセラー本が今でも読まれていて、30年、40年以上と読まれ続けているものが多いのですが、「On the table」では比較的新しい本を取り上げていこうと考えています。

Q.全12回シリーズですが、1回参加して満足というものではなくて、毎回新しい発見があり、同じ人が何回参加しても楽しめるような企画になっているのですね。

(笹岡)そうですね。毎回違う内容ですので一度足を運んでくださった方に、また次回も参加したいと思っていただけたら嬉しいです。ただ、いつも決まった人達だけが参加するサロンのようにしたいわけではないので、常に新しい方に対しても扉を開きつつ、「On the table」ファンになった方には毎回ご参加いただきたいです。

講演会の開始時間も午後3時からと以前より早まったので、終了後に編集者の方や参加者の方々と個別でお話ししたりすることも可能です。講演会後の余韻を含め、雰囲気を味わっていただきたいです。ぜひご参加をお待ちしております。

「世界の書棚から」について

在日大使館の職員や、各言語の翻訳家を講師にお招きし、各国の注目の絵本作家や作品、最新出版事情などをお話しいただく講演会シリーズ。。

Q.4月22日開催分の申し込みはもう締め切ったと聞きました。

(笹岡)はい、申し込み開始から2、3日で満員になりました。この企画に関しては、申し込みはまだですか?と聞いてくるような熱心なファンの方がいらっしゃいます。

Q.「世界の書棚から」の企画は、どんなところから着想を得たのですか?

(松岡)世界には色々な文化圏があり、様々な絵本やそれに関する取組があります。しかし日本にいると、翻訳というフィルターもあり海外の作品に触れる機会は多くありません。また、海外の最新事情はすぐに反映されにくいです。そこで、子どもの本を通して世界の今を感じられるような企画をやりたいと思ったのがきっかけです。それから、この板橋に新しく完成した中央図書館を使って、色々なタイプの人達が集まってくるような場づくりをしたいと考えました。その時にたまたまフランスの文化会館(アンスティチュ・フランセ)から板橋区立美術館とコラボしたいという話をいただいて、そこから話が進んで、図書館で実施することになりました。また、ほかの大使館の方に話をしたところ、良い機会だからコラボできるなら企画に参加したいとのお返事をいただきました。それならば企画してみようと思い、「世界の書棚から」という講演会を作ることにしました。

Q.講師にはどんな内容の話をお願いするのですか。

(松岡)基本的には最新情報について話をしていただきたいと思っています。各国の子どもの本の世界は今どんな動向なのか、話題になっている作家や出版社、イベント、図書館、展覧会など、その中から講演者が話しやすいテーマを選んでいただいて、自由に話していただくことにしました。

Q.国によって絵本文化が盛んであったり、そうではなかったりというのは感じますか?

(笹岡)日本に情報が入ってくるかこないかの違いもありますが、国を挙げて子どもの本の出版文化に力を入れているところは勢いがあります。また絵本に関して伝統がある国は、そうした意味での堅実な強みがあり、また独立系の出版社が小さいながらもいい本を出している国など、優劣はありませんが国ごとのカラーは感じますね。また一方では、大きな出版社が国をまたいで事業展開をしている例もあります。

(松岡)国が文化戦略政策として取り組んでいるところは、よい作家が育っていますね。また、情報発信に関しては、その国の出版社が国内でどのような動きをしているのかと、海外に向けてどのように発信しているのかという2つの面があると思います。私たちが日本から海外の情報を収集すると、どうしても国外に対しての発信しか見ることができません。そのため「世界の書棚から」では、その国の出版社が国内向けにどんな発信をしているのかという話が聞けるのはとても面白いと思います。

Q.よい作家が育つような国はどの様に取り組んでいると感じていますか?

(松岡)情報を得る機会を作り、出会える場を作る、そして海外に出ていくサポートをするような取組です。「世界の書棚から」は、参加される方に新鮮で他では得られない情報と、出会える場を提供することを目的にしています。 

Q.「世界の書棚から」は、そこに様々な国の絵本を紹介するだけでなく、絵本の裏にあるその国の最新の姿カタチがわかる点がこの企画の魅力ですね。

(松岡)子どもの本の企画で、これだけの大使館の方を集めた企画はこれまでにないと思います。各国大使館の方々にも文化発信の玄関口としてこの企画を使ってもらえたら良いのではないかと思っています。

Q.講演会の開催時間が変更になりましたが、そこに何か意図はありますか。

(松岡) 4月からは金曜日の午後6時開始となりました。この時間であれば、仕事終わりの方も参加できるのではないかと考え、時間を変更しました。また、定期的に開催することで、外国関係のイベントが開催されているというイメージが定着できたらと思っています。

大人から子どもまで楽しめる関連イベントについて

Q.「On the table」の講演に合わせた関連イベントは行うのですか?

(笹岡)「On the table」は大人向けの企画ですので、開催日の午前中に子ども向けのワークショップを行う予定です。講演会と同じ日の10時からおはなしの部屋で、「On the table」で取り上げる絵本の読み聞かせと、本の内容とリンクするようなイベントを企画しています。

図書館がこれまでやっていた絵本関連のイベントはどちらかというと子ども向けが多かったので、大人に向けてもアプローチしたいと考えていました。そんな時に松岡さんから「On the table」、「世界の書棚から」という素敵な企画をいただいたので実現に向けて動きました。一方で、従来の利用者にも還元できるイベントを行う必要があると考えているので、毎回大人向け、子ども向けのイベントをセットで行っていこうと考えています。

Q.「世界の書棚から」の講演に合わせた関連イベントは行うのですか?

板橋区では毎月23日を「うちどくの日」としています。そこで、本企画に合わせて「世界の書棚から」で取り上げる国をその月の「うちどくの日」のテーマにして、4月であればカナダの作家の本やカナダについての本、カナダで出版された本などを借りたら、手作りのパスポートに出国のスタンプを押す。返却したら帰国のスタンプを押すという、1年間を通してのスタンプラリーを始めました。このイベントの内容をカナダ大使館の方に話したら、カナダ関連のグッズを貸してくださったので、図書館内に展示しています。

大人だけではなく、図書館を利用する子どもたちや親子連れも楽しんでもらえるイベントを開催していきたいと思っています。

取材の風景

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