コラム「史跡公園実験室」第7回 文化財講座をアーカイブする(2)
板橋区では、国史跡「陸軍板橋火薬製造所跡」をテーマにした講座を毎年開催しています。これまでの講座の内容を振り返るコラム、第2回となる今回は令和3年と4年の講座を紹介します。
視点を広げて「工都板橋」へ
さて、史跡の歴史を知ろうとする時、史跡だけに注目していては不十分です。ズームアウトして周りの地域まで観察すると、その性格がよく見えてきます。令和3年度は、板橋区の産業の歴史に注目して「”光”都への道行」という講座を行いました。
板橋区は戦前から工業が発達しました。それには明治初期の板橋火薬製造所の開設と、大正後期に発生した関東大震災とそれ以降の復興計画が影響を与えています。「工都板橋」と呼ばれるようになった背景を、座学形式で解説しました。特に2021年度は、板橋区を代表する産業のひとつ、光学産業に主点を当てました。
ちなみにこの講座は、史跡公園の整備に向けた展覧会シリーズとして工都展を開始したことに合わせ、展示と同時開催しました。
遺構は「縁」にある
令和4年度に開催した「風景の縁(へり)」は、史跡指定地の外側に注目した講座です。
みなさんはいつも暮らしている街で、ふと古いものを見つけた経験はありませんか。注意しながら歩いてみると、街の中には地域の歴史を表す古いもの、つまり「遺構heritage」が思いのほかたくさん見つかるものです。
史跡がある加賀地域もそうで、火薬製造所時代の境界杭や万年塀、土塁などの遺構がひっそりと残っており、これらを巡りながら地域の歴史を解説しました。
ところで、講座のタイトルはすこし風変わりですが、「遺構heritag」は見慣れた風景の「縁(へり)」にあるようだ、という意味で名付けたものです。
参加した方が遺構の存在に気付いて驚く表情と、街の見え方が変わったというご感想が忘れられません。
つづく
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