コラム「史跡公園実験室」第12回 PfN展を終えて その3
米国国立公文書館での調査
令和5年度に行った米国国立公文書館での史料調査は、旧板橋火薬製造所を映した写真など、新たに100点近くの貴重な史料を見つけ出す成果を得ました。
この新発見を史跡公園の整備へとつなげていくためには、史料をより深く分析する必要があります。
(前回のコラムはこ ち ら)
機械がある場所は…
具体的には、この写真がいつ誰によって撮られたのか、どこで何をどのような理由で撮ったのか、という基本的な問題をまずは検討する必要があります。そしてこの作業には、一筋縄ではいかない難しさがあるのです。
先の火薬製造用の機械の写真の例で考えてみると、実はこの写真が板橋火薬製造所内のどの建物の中で撮られたのか、まだわかっていません。
一つのアプローチとして、機械を観察することで、使われていた工程を判断でき、そこから製造所内の工室の候補を比定することができます。国内に残る資料から、機械や製造工程がわかっており、これを踏まえれば撮影された建物の位置は比較的簡単にわかるはずです。
ところが、この機械はすでに元あった場所から撤去された状態だと考えられます。角材の上に置かれ、さらに同じ機械が奥にも並べられている点も、機械の移動を示唆しています。すでに移動されたという可能性を考慮すると条件は複雑になり、現時点でははっきりした撮影地点が同定できないのです。
「わからない」というの醍醐味
せっかくの新発見を紹介するコラムなのに、「まだわからない!」ということを書いてしまいました。
しかしこの「わからなさ」は、歴史研究のひとつの醍醐味だと思います。
安易な想像や都合の良い決めつけに頼らず、歴史資料に謙虚に向き合い、客観的に問いかけること。それは決して楽しい作業だけではありませんが、諦めずに続けていけば、時を隔ててた過去の出来事であっても、いつかきっと見えて来るものだと思います。
板橋区教育委員会は、今後も米国などの海外資料調査とその分析を続けていく予定です。
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