コラム「史跡公園実験室」第11回 PfN展を終えて その2
学芸員の気づき
前回、令和5年度に行った米国国立公文書館での史料調査で、アメリカのリサーチャーが「Iidabashi arsenal」と書かれた写真を発見しました。「Iidabashi」は「Itabashi」の誤記で、本当は板橋火薬製造所の写真ではないかと見抜いたのです。
リサーチャーから送られてきた写真データを見て、私たちは次の2点に気が付きました。
(前回のコラムはこ ち ら)
機械の形とペンキで書かれた番号
リサーチャーから送られて来た写真データを見て、私たちは次の2点に気がつきました。
まず写っている機械が、無煙火薬の製造に用いる物であること。
写真裏面の当時書かれたキャプションに「smokeless powder」とあり、さらに実際に国内に残る文献の情報と比較しても、写真に映る特殊な形状は無煙火薬の製造機械と見て間違いないと判断できました。
次に機械にペンキ書きで「39-54-○○○」という番号の書き込みがあることに気がつきました。
これはよく似た事例が史跡指定地に残っており、第5回の史跡公園実験室で紹介しました。「39」はGHQの東京軍政部、「54」は旧板橋火薬製造所を指す番号であり、最後の3桁は機械それぞれに振られた個別番号です。
その他の情報も合わせて考えると、旧板橋火薬製造所がGHQの管理下にあった1948年、既に使われなくなっていた無煙火薬を製造する機械を、GHQの経済科学局が調査した様子を撮影した写真であることが判明しました。
大きな成果
旧板橋火薬製造所や、工場の機械を捉えた写真は極めて珍しいものです。戦前の写真を含めても数点しか見つかっていない、まさに重要な史料を発見することができたのです。
今回の調査では、こうした貴重な写真が100点近く見つかりました。アメリカでの調査を担った株式会社ニチマイのリサーチャーの、まさに慧眼によって発見された貴重な史料です。
(写真は調査を委託した株式会社ニチマイの提供)
つづく
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