2026年7月11日 さわる絵本コンクール〈トッカ・ア・テ〉2026審査報告

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ページ番号4002072  更新日 2026年7月15日

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7月11日(土曜日)に、トークイベント「さわる絵本コンクール〈トッカ・ア・テ〉2026審査報告」を開催しました。
板橋区立美術館では、2020年頃より、イタリアのさわる絵本の収集・調査などを行っています。さわる絵本は、見えない人・見えづらい人を対象に、見える人も一緒に楽しむことのできるようデザイン、制作された絵本です。当館では、過去のボローニャ展や所蔵品展で紹介しているほか、イベントやワークショップの開催を重ねてきました。
本イベントでは、2026年4月にイタリア・アッシジで実施された、さわる絵本コンクール「トッカ・ア・テ」について、審査員のひとりを務めたボローニャ展のコーディネーターである森泉文美さんと、応募者であり審査にも立ち会った齋藤名穂さんのお二人にお話いただきました。

はじめに、森泉さんよりお話いただきました。さわる絵本は、点字と拡大された墨字が記されており、さまざまな素材が用いられていることもあって手作りの部分も多く、制作に時間やコストもかかります。そのため出版社でたくさんの部数を出版するのは難しい本でもあり、イタリアでは「トッカ・ア・テ」の主催者でもある全国視覚障害者支援施設連盟(以下、連盟)をはじめとした非営利団体などが助成を受け、制作しているそうです。
さわる絵本に関わる活動は、イタリアにおいて重要な社会的役割を持つそうで、人と人とをつなげる社会的インクルージョンのツールとして活躍しており、さわる絵本をつくって楽しむという社会的運動もみられるといいます。こうした背景にある、1977年よりはじまった、イタリアのインクルーシブ教育についてもお話くださいました。

1994年にフランスでさわる絵をつくる非営利団体「レ・ドワ・キレーブ(夢みる指先)」が設立され、2000年には国際的なさわる絵本コンクールである「THPHLO AND TACTUS」がはじまりました。2004年に、イタリアの連盟がTYPHLO AND TACTUSのメンバーの一員になり、本格的なさわる絵本の出版がはじまったそうです。はじめはフランス語版の翻訳が中心でしたが、次第にオリジナル作品も出版されるようになりました。連盟のさわる絵本担当であるピエトロ・ヴェッキアレッリ氏は、2023年に当館でさわる絵本ワークショップを行っています。このワークショップの参加者の有志が「さわる絵本づくりラボ」というグループをつくり、2023年よりトッカ・ア・テにも応募をはじめています。
この連盟がはじめたのが、さわる絵本コンクール「トッカ・ア・テ(Tocca a te!)」です。2011年より隔年で実施されており、イタリア語で「あなたの番です」という意味を持つ言葉です。2026年に実施されたのは第8回目で、アッシジで開催されました。今回は179冊の本の審査が行われ、日本から26冊、学校からは20冊の応募があったそうです。審査は、森泉さんも一員である大人審査員と、地元の子どもたちを中心とした子ども審査員によって行われました。会場や授賞式の様子などを、写真と一緒に紹介してくれました。
この「トッカ・ア・テ」では、賞金のでる5つの賞があります。その受賞作は、今年の10月にチェコで行われる、国際大会THPHLO AND TACTUSにも出品されることが決まっています。この5つのうち、「最優秀さわるアーティスト絵本賞」をまえだよしゆきさんが、「最優秀幼年さわる絵本賞」をたなべあやさんが受賞しました。森泉さんは、受賞作やメンションされた作品がどのようなものなのか、また審査員たちの反応や講評などを紹介してくれました。これまで日本ではあまりみたことのないような、多様なアイディアで生まれたものが多くあり、参加者も関心をもって見られているのが伝わってきました。

次に、齋藤さんにお話いただきました。建築家でありデザイナーである齋藤さんは、長野県立美術館や東京国立博物館、東京都庭園美術館など、様々な美術館でさわるツールを制作したり、空間設計などを行っており、当館とも様々なかたちでご一緒しています。2023年に、当館で実施したピエトロさんの講演会への参加をきっかけに、さわラボへも参加しています。
齋藤さんは、子ども審査の見学を行ったとのことで、そのときのことを中心にお話してくださいました。今回は、6歳から19歳までの子どもたちが参加していたそうです。子ども審査用には、全体の応募の中から15冊ほどを選び、それを全員が読んでいくという形をとっており、ひとりひとりが時間をかけて読んでいたのが印象的だったとのことでした。
審査風景として、子ども審査員賞をとった「La Tua Paura, La Mia Paura(怖いと思うとき)」や、最優秀さわる教育絵本「Un Bebè. Si Ma Come? —(赤ちゃんはどうやって生まれるの?)」について、写真と一緒に丁寧に紹介してくれました。さまざまな恐怖について考えるゲーム形式の絵本や、お母さんのおなかのかたちをした赤ちゃんが生まれてくるまでの過程をさわる絵本のかたちにした本などを、だれも茶化したりすることなく、子どもたちひとりひとりが真剣に読んでいたのが印象的だったとのことでした。
また、齋藤さんは、木工やレーザーカッター、点字のUVプリンターなどがそろった工房への見学や、ローマにある連盟では「Tactile Go!」という移動式さわる絵本図書館の見学を行っており、そのお話もしてくれました。後者の「Tactile Go!」は、連盟のプロモーション活動などでも使われています。木製の大きな箱のなかには、さわる絵本が100冊ほどと、点字があそびながら学べるような仕組みなどが詰め込まれており、これを車に積んで、イタリア中をめぐっているとのことでした。
齋藤さんは、今回応募者としてもトッカ・ア・テに参加しています。はじめてさわる絵本をつくっていくなかで、さまざまなチャレンジがあったとのことでした。自分がつくりたいものを実現するために素材をさがし、それをどう貼っていくか、どう製本するか、どう点訳して中身とマッチしたことを入れ込むのか…など、ひとつが実現すると次のチャレンジが待っていたそうです。さわる絵本づくりには色々な工程があるため、実際に会場に行ったとき、並べられた応募作品すべてが、さわる絵本のかたちになっていることにも驚かされたとのことでした。だからこそ、つくられた絵本は、すごくパッションのある人たちがつくっていると感じたとのことでした。

以上のように、森泉さんの審査員としての目線でイタリアでのさわる絵本の活動や、トッカ・ア・テというコンクールについて、その応募作についてのお話と、齋藤さんの子ども審査員へのまなざしや製作者としてのお話と、大変充実したトークイベントになりました。
イベントの最後には、会場にお越しになっていた受賞者であるまえださんとたなべさんに、イタリアから届いた盾をお渡ししての授賞式や参加証の授与なども行われました。また、このトッカ・ア・テでは、長年の友情を記して、板橋区立美術館へも友情賞をいただきました。
会場には、さわラボによるトッカ・ア・テへの応募作の日本語版や、当館所蔵のイタリアのさわる絵本なども展示しました。展覧会終了後も、多くの方が熱心にご覧になっているのが印象的でした。

お話くださった森泉さん、齋藤さん、そして日本語版の応募作を持ってきてくださった応募者のみなさん、本当にありがとうございました!

森泉さん講演会風景

齋藤さん講演会風景

さわる絵本 応募作にふれる様子