2014年12月2日 イエラ・マリ展 作品紹介1
イエラ・マリの最初の絵本は、エンツォ・マリと共作の『りんごとちょう』です。1950年代末、幼い2人の子どもたちのために作った字のない絵本です。りんごとちょうの成長と世代が受け継がれていくことを描いたこの絵本には、ふたつのバージョンがあります。
最初のバージョンは、ミラノのボンピアーニ出版から1960年に刊行された小さな判型のもので、正方形の場面が続いていきます。リング綴じで表紙もないため、絵本の形態そのものが、始まりも終わりもない循環をよく表しています。(写真はケースとともに)
もうひとつのバージョンは、ミラノのエンメ出版から1969年に刊行されました。こちらはハードカバーですが、表紙や見返しにも、場面が途切れることなく続いています。また、こちらは見開きの横長の場面となっています。
イエラ・マリ、エンツォ・マリ『りんごとちょう』Emme edizioni
La mela e la farfalla ©1969, Iela et Enzo Mari ©2004, l’école des loisirs for the World Rights
現在流通しているのはエンメ版と同じ形の絵本ですので、『りんごとちょう』といえばこちらがよく知られています。ボンピアーニ版は、当時としてはあまりにも斬新な絵本だったため、商業的には成功せず、版を重ねることもなかったようです。
展覧会場では冒頭に2つの絵本を並べていますので、ぜひご覧ください。
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