時代を紡ぐ「北陸新幹線の開業と加賀藩前田家の参勤交代」
北陸新幹線の長野・金沢間開業と加賀藩前田家の参勤交代
参勤交代が制度化されていた江戸時代において、板橋区と縁の深い加賀藩前田家は、金沢から北国街道を抜けて、追分宿で中山道へと合流し、板橋を経由して江戸へとむかう参勤交代ルートをとっていました。このルートは「下街道」と呼ばれており、その距離は約480キロメートルで、12泊13日の行程となっていました。
現在、国指定の重要無形民俗文化財になっている、金沢市に伝わる「加賀万歳」の代表的な演目に、加賀藩の参勤交代における道中を唄った「北国下道中」があります。これは18世紀前半には成立したとされ、道中の地名や名所・名物を掛詞にして構成されたものです。その最後の部分には、板橋から本郷邸の情景が唄われています。
戸田の渡しも恙なく、やれ嬉しやと板橋の、いせやいせやと待ち給ふ、是大君の下屋敷、見るに思ひをますかがみ、白山かけて追分の、御門ひらける一ヶ国、上下羽をのす万歳を、祝い数へて舞ひ納む
ここでは、戸田の渡しを過ぎて、ようやく江戸へと近づいた喜びの中、板橋宿内に多くの店を構えていた伊勢屋を掛詞とし、板橋の前田家江戸下屋敷平尾邸と赤門のある上屋敷本郷邸が唄われ、藩主一行が無事到着したところで、めでたく唄が納められています。
なお、万治二年(1659)に加賀藩によって整備された、金沢・江戸間の早飛脚では、夏場において同ルートをつかい、60時間を要したとされ、これが江戸時代における最短の所要時間と思われます。
平成27年3月14日、北陸新幹線の長野-金沢間が開業しました。同新幹線は、ほぼ加賀藩前田家の参勤交代にそったルートを走行していますが、江戸時代に数日かかった行程を最速でわずか2時間28分で結ぶこととなりました。
板橋区の友好交流都市であり、加賀百万石の城下町である金沢市を、加賀藩前田家の参勤交代に思いを寄せながら、訪ねてみてはいかがでしょうか。
【学芸員 吉田政博】
※平成27年3月28日発行「広報いたばし」掲載
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