2017年5月6日 館蔵品展「絵画は告発する/特別展示 板橋の日本画」ギャラリートーク
本日5月6日(土曜日)は担当学芸員によるギャラリートークを行いました。
今日もとても良いお天気で、散策の途中に立ち寄られた方も多かったようです。
38人の方にご参加頂きました。
スライドで、展示作家、作品について担当学芸員がお話ししました。
その中から一部の作品をご紹介します。
浜松小源太《世紀の系図》(1938年)
展覧会の第2章「シュルレアリスムと戦争の影」より。
1920-30年代に日本を席巻したプロレタリア美術は、治安維持法違反で弾圧を受け、終焉を迎えました。入れ替わるように流行し始めたのがシュルレアリスムです。
《世紀の系図》(1938年)を描いた浜松小源太は秋田県から上京後、板橋区志村の小学校の先生をしながら画家の活動をし、シュルレアリスムに影響を受けた作品を描きました。
画面の中央には眠る赤ちゃんの姿が描かれていますが、よく見るとカーキ色の軍服に絡め取られそうになっています。その上には破れた旗も見えます。下に目を移すと、兜や鳥、オウム貝など、様々なモチーフが見え隠れしています。
長い戦争に突入する時期の、閉塞した日本の状況を反映したような作品です。
浜松はビルマ(現ミャンマー)で戦死しています。
麻生三郎《一子像》(1944年)
第3章「抑圧の時代と絵画」より。
1940年の大政翼賛会、大日本産業報国会の結成をはじめ国民を戦争へと総動員する体制が確立し、その影響は美術界にも及びました。
言論や表現が制限された時代に、麻生、井上長三郎、松本竣介ら8人の画家達は新人画会を結成します。画材の制限がある中で、家族など身近なモチーフを描き、自分達のできる限りの展覧会を開きました。
麻生三郎《一子像》(1944年)は同年に誕生した長女を描いた、小さな作品です。
灯火管制の中で描かれたと考えられます。
松本竣介《りんご》(1944年、寄託作品)
この作品の実物を近くで見ると指紋を確認できます。
これは画家自ら、画面に指を押し付けることで、子どもの肌の質感を出したようです。
松本が「俊介」から「竣介」に署名を変えた、初めての作品です。
末松正樹《自画像》(1944年)
末松正樹は舞踊家として戦前のパリに渡り、戦時下のフランスでは捕虜として軟禁生活を送りました。展示では軟禁生活中の《自画像》(1944年)と色鉛筆による作品を併せて紹介しています。
高山良策《1948年》(1949年)
第4章「『戦後』の人体表現」より。
1945年8月、15年間続いていた戦争が終わりました。
高山良策の《1948年》(1949年)は、1948年に起きた出来事を映画のモンタージュのように一つの絵に構成しています。
画面の中には、当時高山が勤務していた東宝の労働争議の様子も描かれています。
本展覧会のギャラリートークは今日でおしまいです。
お越し頂いた皆様ありがとうございました。
6月10日(土曜日)には、大谷省吾氏(東京国立近代美術館美術課長)による記念講演会「絵画に託されたメッセージを読み解く」が開催されます。
当館1階講義室にて、午後2時00分〜午後3時30分。
申込不要、聴講無料、先着100名です。
当日会場へ直接お集まりください。
ご来館お待ちしております!
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