2023年6月25日 森泉文美氏講演会「触って視るボローニャ展 木製触察パネルの制作」

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ページ番号4001778  更新日 2023年7月2日

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6月25日(日曜日)には、ボローニャ国際絵本原画展の特別展示「触って視るボローニャ展」についての講演会を開催しました。講師は、本展コーディネーターの森泉文美さんです。

本展では、視覚に障がいのある方も手で触ってイラストレーションを楽しんでいただけるように、入選作品の中から5枚を選んで木製の触察パネルを展示しています。
このパネルの制作は、美術作品へのアクセシビリティ向上に熱心に取り組んでいるローマ市立パラエキスポ美術館の協力で実現しました。イラストレーションを触察パネルにするには、絵柄を整理してわかりやすくする必要があります。今回はイラストレーターの許可を得て、同美術館教育普及部の監修のもと絵柄を改変(翻訳)して、視覚障がいのある方々にテストをしていただきながら、ローマ在住の木工職人の方と協働して完成させました。

イタリアではインクルーシブ教育が進んでおり、視覚障害のある方たちの美術へのアクセスについても様々な試みがされています。森泉さんはこうした状況にもとてもお詳しく、今回は、5人のイラストレーター、パラエキスポ美術館教育普及部、職人のアルフレードさんと何度もやり取りをしてくださいました。

講演会では、パラエキスポ美術館の紹介から始まりました。ローマの中心地にあるこの美術館の地階にある教育普及部は、2014年ころから、美術への身体的・社会的・言語的なバリアを取り払うための活動を積極的に行っています。病院、刑務所、難民センターなどの機関と連携しながら展開しているワークショップやガイドツアーについて、森泉さんは沢山のスライドとともに具体例をいくつかご紹介くださいました。近年、美術館のアクセシビリティについては日本でも多くの方が関心を持っているところと思います。

講演会の後半は、今回制作した触察パネルについて詳しくご説明いただきました。木の板をレリーフ状に彫ったものですが、彫りの高さが5層になっており、どの部分をどの高さにするかスケッチしながら試行していったそうです。木工作業は、パソコンでプログラムして機械で彫っていくのですが、刃先の種類もたくさんあり、絵の表現に合わせて職人の方が細かな調整をして彫り上げ、部分的に目の細かいサンドペーパーで仕上げられました。

この「触って視るボローニャ展」は、2020年に続く2度目の試みです。2020年の際は、初めてだったこともあり、絵柄のわかりやすい作品を選んで触察パネルにしましたが、今回は表現や技法のバリエーションを重視して5枚を選びました。水彩絵の具のにじみや銅版画の明暗などを木の板に表すために、さまざまな工夫がなされています。

触って鑑賞することで、触覚を通した世界の豊かさや奥深さを体験していただけると思います。ぜひ会場でご自身の手と指で触ってみてください。

6月25日講演会1

6月25日講演会2