2023年7月2日 ピエトロ・ヴェッキアレッリ氏講演会「だれにでもよめるさわる絵本」

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ページ番号4001782  更新日 2023年7月5日

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2023年のボローニャ展に合わせて、イタリア全国視覚障がい者支援施設連盟でさわる絵本の制作と普及をしているピエトロ・ヴェッキアレッリさんが来日してくださいました。
ピエトロさんは、6月29日からの3日間で、イラストレーターを対象にしたさわる絵本づくりのワークショップの講師を務め、参加者たちにたくさんのことを伝えてくださいました。7月2日には、一般向けにさわる絵本の講演会を開催しました。通訳は、ワークショップに引き続き本展コーディネーターの森泉さんがつとめてくださいました。

お話は、ピエトロさんがさわる絵本を作るようになったきっかけから始まりました。
イタリアでは1970年代から視覚に障害のある子どもたちが地域の学校で学ぶインクルーシブ教育が導入されました。このことにより、どの子どもたちも自分の地域の学校に通うことができるようになりましたが、一方で補助教員のためのトレーニングなどさまざまな課題もあるため、同連盟では全国の協力施設とともに様々な側面から視覚障がいのある子どもたちの学びを支えており、ピエトロさんたちのチームは教材制作を担当しています。
ピエトロさんがこの仕事を始めた2003年ころ、ご自身のお子さんが絵本に夢中になっていて、その様子を見て絵本の魅力に気づいたそうです。そこで、視覚障がいのある子とない子が一緒に楽しめる絵本について調査を始めました。その際、フランスで視覚障がいのある子どもたちに絵本を作っているレ・ドワ・キ・レーヴ(夢見る指先)という団体の活動を参考にしたといいます。2004年、レ・ドワ・キ・レーヴが主導してヨーロッパで16冊のさわる絵本が発行されることになり、ピエトロさんたちもイタリア語版の制作に参加しました。これ以降、ピエトロさんの連盟では70タイトル14000部ものさわる絵本を発行してきました。

講演会では、さわる絵本の特徴についても様々な点から説明してくださいました。3日間のワークショップでも、さわる絵本の制作で気を付けるべき点について参加者たちに繰り返し伝えていらっしゃいました。

ピエトロさんたちは現在、さわる絵本の普及活動も積極的に展開しています。さわる絵本のコンクールは、2年に1度イタリア各地で開催され、応募者点数はどんどん増えているそうです。2021年のコンクールの際には森泉さんも審査チームの一員として参加されました。近年、ピエトロさんは「T&D BOX」を開発しました。TはTactile(触覚)、DはDigital(デジタル)を表しており、視覚に障がいのある子どもたちのためのさわる絵本やデジタル技術を用いたツールをセットした図書館のようなものです。移動可能なため、小さな町の視覚障害のある子どもたちの元にも届けることができます。
連盟の目標は、すべての人に文化へのアクセスを保証することであり、さわる絵本は視覚に障がいのある子どもとない子どもの間の関係を結ぶことができると語っていました。

講演の最後には、3日間のワークショップの参加者たちから、全員のメッセージをまとめた小さな絵本をピエトロさんと森泉さんにプレゼントするというサプライズもありました。

ピエトロさんの情熱的なご講演に、参加された方々も熱心に聞き入っていました。講演会終了後も、ピエトロさんたちが発行したさわる絵本を実際に触ってみたり、ピエトロさんと森泉さんに質問をしたり、会場はいつまでも熱気に包まれていました。

7月2日講演会1

7月2日講演会2