2023年 9月16日 夏のアトリエ5日目

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ページ番号4001809  更新日 2023年9月18日

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シドニー・スミスさんの夏のアトリエはついに最終日となりました。最終課題に本格的に着手したのが4日目の午後からだったので、とにかく時間がありません。4日目には16時の終了時刻が過ぎても、教室に残って制作を続ける参加者が半数以上いました。帰宅してからもみなさん制作のことで頭がいっぱいで、深夜まで作業をしていた人もいたようです。そんなわけで、5日目の朝にやってきたみなさんの顔には疲れがにじんでいましたが、5日間、一人も休むことなく毎日通ってきてくれています。

最終日の午前中も、シドニーさんはご自身の絵本についてお話をしてくれました。この日は、あと2週間で発売となる「Do You Remember?」という最新作について。絵とテキストの両方をご自身が手がけたこの作品は、少年時代の記憶を元にして作られています。その経験から、今回のワークショップでも、それぞれの子どもの頃の記憶からストーリーを作り出して絵にすることが課題となりました。この絵本の制作し始めた当初は、自分の思い出から作るのだからそれほど難しくないだろうと考えていたそうですが、実際には当時の記憶に向き合うことは想像以上に大変な仕事だったと言っていました。
主人公の少年と母親が一緒に思い出を話し合うこのストーリーでは、見開きごとに、現在と過去、少年の視点と母親の視点、といったような変化があります。なぜこのような構成にしたのか説明をしてくれました。さらに、複雑な感情を抱く少年の表情の描き方、ディテールに込めた意味、テキストのない見開きの効果、文と絵の間のギャップ、レイアウトの工夫、子どもたちに伝えたいことなど、各場面ごとにシドニーさんが試みたことも丁寧にお話くださいました。
連日シドニーさんの制作に対する姿勢や考え方にどっぷりと浸ってきた参加者のみなさんは、日ごとに理解が深まっていっているようです。このワークショップでシドニーさんの絵本について講義を聞くのはこれが最後。そのすべてを逃さないないように、みなさんは集中して耳を傾けたり、メモを取ったりしていました。

講義が終わり、11時頃から最終課題の制作の時間です。いつも制作しながら音楽を流しているというシドニーさんが、ご自身のプレイリストから曲を掛けてくれました。プレゼンテーションは14時からなので、あと3時間ほどしかありません。普段の方法では間に合わないため、新たな画材や表現に挑戦したという人も多かったようです。シドニーさんが5日間のうちに何度も、画材でたくさん遊んでいろんな描き方にトライするようにとアドバイスしていたことが、みなさんの背中を押してくれたのかもしれませんね。みなさんお昼ご飯もそこそこに、黙々と制作を続けていました。

午後2時、画材を片付け、机を掃除をして、教室を模様替えをして、いよいよ最後のプレゼンテーションの始まりです。一人ひとり、みんなの前で3つの見開きを見せながら、文章を読んで発表をしました。プレゼンテーションは緊張はしますが、講師や仲間たちから自分の作品についてコメントをもらったり、迷っている点やうまくいかなかったところにアドバイスをもらったりする大事な時間です。5日間をともにした仲間の作品を見たり、感想や意見を伝え合うことも、とても勉強になるはずです。

自分の記憶に向き合いながら制作をすることはかなり大変な作業だったという人もいるかもしれませんが、5日間のワークショップで学んだたくさんのことが、参加者それぞれのやり方で消化され(消化しきれなかったかもしれませんが)、20の作品となりました。どれも断片的な記憶やあいまいな思い出を元にしたとても個人的なお話ですが、他の人の発表を聞きながら、自分の記憶を重ね合わせたり、忘れていたことを思い出したりした人も多かったのではないでしょうか。

夏のアトリエのために初来日されたシドニーさんですが、実はこのようにイラストレーター向けのワークショップをするのは初めての経験だったそうです。大変忙しい中、入念な準備をしてきてくださり、参加者たちに誠心誠意向き合ってワークショップを進めてくいただきました。また、シドニーさんと参加者の間をつないでくださった前沢さんは、ワークショップの意義やシドニーさんの作品を深く理解し、さらに参加者たちの思いもしっかり受け止めながら通訳をしてくださいました。シドニーさん、前沢さん、20名の参加者、みなさんのおかげで実りある夏のアトリエになりました。ありがとうございました!
シドニーさんは最後に、これで終わりだけど、始まりでもある、とおっしゃっていました。この5日間の体験を糧にして、みなさんがそれぞれの活動を続けていかれることを願っています。

夏のアトリエ5-1

夏のアトリエ5-2

夏のアトリエ5-3

夏のアトリエ5-4

夏のアトリエ5-5

夏のアトリエ5-4

夏のアトリエ5-7


最後におまけの写真です。
これはシドニーさん得意の側転の様子。子ども向けのワークショップのときなどにやるそうですが、今回も何度も披露してくれました。最終日の最後は、側転かと思ったら、途中で止まって逆立ちで歩くという特別バージョンでした!

夏のアトリエ5-8