2023年9月26日 ウクライナの絵本作家ロマナ&アンドリー講演会「絵本作家の未来形」

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ページ番号4001813  更新日 2023年10月3日

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9月26日には、ウクライナの絵本作家のユニット、ロマナ&アンドリー(ロマナ・ロマニーシン氏とアンドリー・レシヴ氏)のお二人による講演会を開催しました。この講演会は、彼らの絵本を出版しているブロンズ新社との共催により実現したもので、同社の40周年記念事業としてお二人を日本へ招聘しました。今回は、絵本作家やイラストレーター(またはそれらを目指す人)を対象に、新作絵本『On the Move 旅するわたしたち』の制作についてお話をいただきました。通訳は絵本作家で翻訳家のジェリー・マーティンさんです。

ロマナ&アンドリーのお二人の絵本は、これまでにボローニャ・ラガッツィ賞を3度にわたって受賞しているため、当館のボローニャ展の中でもご紹介してきました。近年は日本でも翻訳版が刊行されています。洗練されたイラストと色使いで、ノンフィクションのテーマを表現したり、戦争の現実を伝えたりする彼らの絵本は、いま世界中で注目を浴びています。そんなお二人のお話を聞ける機会とあって、平日の講演会でしたが満席となりました。

2022年に出版された『On the Move 旅するわたしたち』は、移動をテーマにしたノンフィクションの絵本で、すでに日本語を含め各国語に翻訳されています。この作品の構想を始めたころはパンデミックの時期と重なり、まさに移動することへの思いが募る中で制作されたそうです。

講演会では、1場面ごとに、そのイラストにどんな意味があるのか、どんなことを考えて描いたのか、スライドを用いて丁寧にお話くださいました。この絵本においてポイントとなる「動き」を描くためには、連続写真や洞窟壁画、イタリア未来派の作品などたくさんの資料を参考にしたそうです。また、路線図や看板といった日常的に目にするものも、制作のヒントになることがよくわかりました。今回は、絵本作家やイラストレーターに向けた講演ということで、ページの使い方、全体の構成など、具体的に工夫した点や意識したことなどをお話くださいました。参加者のみなさんにとっては、制作の参考になることがたくさん詰まった内容だったのではないでしょうか。

講演会の後には、サイン会にも応じてくださり、長蛇の列となりました!さらにその後は、参加者のイラストレーターたちとの懇親会となり、イラストレーター同士の交流も楽しんでくださいました。

ロマナさんとアンドリーさんは、ウクライナからの初めての来日となりました。現在ウクライナには日本大使館がないためビザ取得のために隣国に滞在しながら申請をしたそうです。とくに男性の出国はとても厳しい状況にあります。さらにポーランド経由で何日もかけて日本に到着したそうで、大変なご苦労の末にこの度の来日が実現しました。それでも、ロマナさんとアンドリーさんは板橋区立美術館に来ることを楽しみにしてくださっていたようです。絵本に関する活動を展開してきた当館にとっても、絵本作家やイラストレーターに向けたお二人の講演会を開催できたことは大変光栄なことです。今回の講演会が、ロマナさんとアンドリーさん、そして参加した絵本の作り手のみなさんのこれからの制作活動にとって意義あるものとなりましたら嬉しい限りです。

ロマナ&アンドリー講演会1

ロマナ&アンドリー講演会2

ロマナ&アンドリー講演会3

ロマナ&アンドリー講演会4

ロマナ&アンドリー講演会5