2023年 9月13日 夏のアトリエ2日目

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ページ番号4001804  更新日 2023年9月14日

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カナダの絵本作家、シドニー・スミスさんの「夏のアトリエ」2日目となりました。
午前中前半の1時間ほど、シドニーさんは絵本『おはなをあげる』の制作についてお話くださいました。この絵本はご自身のキャリアにとっても大事な作品だそうです。
詩人によるストーリーを文字のない絵本にしたこの作品では、コマ割り表現を使ったり、抑えた色彩により主人公を引き立てたり、さまざまなことを試みながら作っていった様子を具体的にお話しくださいました。鏡やガラスの「映り込み」を描くようになったのもこの絵本からだったとのこと。最初のスケッチの段階ではまったく違うタッチやキャラクターだったそうですが、他のアーティストの作品を参照したり、たくさんスケッチをしていくなかで、これだ!と思うものにたどり着いたということです。また、描かないことで、読者に何が起こったのか想像させるという手法も説明してくれました。そして、自分を信じてくれる編集者との出会いがとても重要であるということも強調していました。

その後、午前の後半には小さなエクササイズをふたつ行いました。
一つ目は、カードサイズに紙を切り、3コマの表現に挑戦します。お題は「1分」「1日」「一生」の3つです。普段の制作でコマ割りの表現を使わない人にとっては新鮮な体験だったと思います。
二つ目の課題は、3枚の紙にそれぞれシンプルな文章(疑問文、平叙文、自分の感情や状態を表す文章)を書きます。その後、シドニーさんの指示でその3枚の紙を持って隣の席に移動しました。その時点ではみんなの頭の中は「?」となっていたようですが、文章を書いた3枚の紙を、隣の人がさきほど描いた3つの3コマの絵の横に置いてくださいと言われると…。3コマの絵に思ってもみないテキストが付けられて新たなストーリーが生まれたり、意外にも絵とテキスががぴったり合っていたり、絵とテキストが全く合わないことでむしろ見る人の想像が刺激されたり。みんなで一緒に見て回り、会場は大盛り上がりとなりました。今回のワークショップではテキストが大きな役割を果たすということが、このエクササイズで伝わったのではないでしょうか。
午後には「Memory Map」(記憶の地図)をそれぞれが描くことになります。その説明をしてからお昼休憩となりました。

午後1時過ぎ、「記憶の地図」の作業を始めるのだろうと思いきや、シドニーさんは持参した画材を紹介しながらオリジナルのテクニックを披露し始めました。イラストレーターの皆さんにとって、シドニーさんの描いている様子を間近で見られるまたとない機会です。参加者の質問にも答えながら、次々に瓶やチューブから画材を出して、どんどん描いていくシドニーさんの手元にみんなの目は釘付けとなりました。バッグの中から無造作に取り出された『おばあちゃんのにわ』のための原画にもびっくり。いつの間にか狭い机の上は小さなアトリエのようになりました。この幸福な時間は1時間近くも続きました。

さて、2時近くになって改めて「記憶の地図」の作業にとりかかりました。ポスター大の大きな紙に、それぞれの技法で子ども時代の思い出を絵とテキストで地図にしていきます。

この日の午後からはシドニーさんに作品を見てもらうポートフォリオレビューも始まりました。ひとり15分に限られていますが、講師と1対1でお話できる貴重な時間です。

3時すぎ、「記憶の地図」がだいぶ出来上がったところで、何人かの地図を見ながら思い出も語ってもらいました。昔の記憶なのではっきりしないこともありますし、子どもには分からないことも沢山ありますが、そのときの気持ちやディテールを覚えていれば、ストーリーになるとシドニーさんは言います。
その後、地図の中に書いた思い出の中から二つを選び、白い紙にテキストとして書いていきます。その際、感情を直接的に表す言葉を使わずにディテールを積み上げながら書くこと、そしてこの作業は迷ったりためらったりすることなくどんどんペンを動かしてほしいと、シドニーさんから指示があり、一つのエピソードにつき5分間が与えられました。このテキストを元にして、明日以降の制作をすることになります。

今回のワークショップはテキストとイメージの関係性がテーマです。自分の子ど時代の思い出からそれぞれテキストを作り、3つの見開き場面を描いてみるというのが最後の課題です。

前日の緊張した様子から、みなさんだいぶほぐれてきました。参加者はキャリアも年代もさまざまな20人ですが、お互いの作品を見せ合ったり、休憩時間やランチを共にしたりする様子は、まるで学校の仲間のようです。
3日目からはいよいよ今回の最終課題が始まりそうです。シドニーさんは時差や暑さでお疲れのはずですが、絵本のことを話したり絵を描いたりする様子からはまったく疲れを感じさせません。前沢さんはワークショップの進行にも気を配りながら、参加者とシドニーさんをつないでくださっています。

夏のアトリエ2-1

夏のアトリエ2-2

夏のアトリエ2-3

夏のアトリエ2-4

夏のアトリエ2-5

夏のアトリエ2-6

夏のアトリ2-7