2023年12月3日 トークイベント「イタリアのさわる絵本とコンクール”Tocca a te”への挑戦」

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ページ番号4001831  更新日 2023年12月6日

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12月3日には「イタリアのさわる絵本とコンクールTooca a teへの挑戦」と題したトークイベントを開催しました。講師は、イタリア全国視覚障がい者支援施設連盟のピエトロ・ヴェッキアレッリさんと、ボローニャ展コーディネーターの森泉文美さんです。イタリアにいるお二人とオンラインで会場をつないでお話をうかがいました。森泉さんは通訳も務めてくださいました。
同連盟で視覚に障がいのある子どもたちの教材を制作しているピエトロさんは、20年近く前から「さわる絵本」に関心をもちはじめ、現在イタリアでさわる絵本に関する活動を積極的に展開しています。今年の夏に来日し、イラストレーターたちに向けて当館でイタリアのさわる絵本についてのワークショップを開催しました(このときの通訳も森泉さんでした)。その受講者たちの中には、講座中に作った作品をブラッシュアップさせて、10月にイタリアで開催されたさわる絵本のコンクール「Tocca a te(トッカ・ア・テ)」に挑戦した人たちもいます。

今回のトークイベントでは、このコンクールの概要や審査の様子の報告と、後半ではコンクールに挑戦した作品の紹介となりました。
まずはピエトロさんから「Tocca a te」がどんなコンクールなのかというお話です。2年に一度開催され、今回で7回目となるこのコンクールは、毎回イタリア各地で審査が行われます。今年はボローニャがその舞台となりました。このコンクールで選ばれた5作品は、翌年開催される「ティフロとタクトゥス」という、さわる絵本の国際コンクールに進むというシステムになっています。ピエトロさんは「Tocca a te」などの多彩な活動を通して、この分野に多くの人の関心を集めています。夏に来日した際にも、日本からのコンクールへの応募を力強く呼びかけていました。その情熱に突き動かされ、当館でのワークショップの受講者を含め、日本から13人が応募することになりました(遅配や税関での留め置きなどのため、審査対象となったのは8作でした)。

続いて、審査員の一人をつとめた森泉文美さんが、審査の様子や受賞作品についてお話くださいました。期日までに到着した145冊が審査対象となり、専門家で構成される大人審査団と、視覚に障がいのある子どもたちで構成される子ども審査団によって選考が行われました。彼らが楽しみながらも熱心に審査にあたった様子が、スライドからも伝わってきました。また、国際コンクールに進む5つの賞を受賞した5冊と、候補作もあわせて1冊1冊丁寧にご紹介くださいました。その中で、アーティスト賞を受賞したのが山梨県立大学の古屋祥子さんの「さわりたいもの」という作品です。

その後、コンクールに日本から挑戦した13人のうち10名の方に作品をプレゼンテーションしていただきました。(アーティスト賞を受賞した古屋さんと、夏にピエトロさんのワークショップに参加した9名)。映像や写真でプレゼンしてくれた方たちもいましたが、もう1部を作って実物を使ってプレゼンしてくれた方もたくさんいました。布で作ったもの、多様な素材を貼り付けたもの、動かすことのできる仕掛けのあるものなど、技法や形態は実にさまざまです。内容も、子どもの日常を表したものから、気持ちなど抽象的なものまで、多彩でした。そして、どの作品も触ったときのことを十分に考えて制作されている一方で、やはり視覚的な面白さもあります。1作ごとにピエトロさんが加えてくれた講評には、さわる絵本のエッセンスが凝縮されていて、とても勉強になるものでした。ピエトロさんは、今回のコンクールに日本からの応募があったことをとても喜んでいて、どれもクオリティが高くプロフェッショナルな仕事であったとおっしゃていました。これらの作品の中には、ピエトロさんたちの連盟で今後刊行を考えている作品もあるそうです!

イタリアで開催されるコンクールということで、文化や言葉の違いもありますし、イタリア語の点字を付ける必要もあります。さらに輸送や税関などの難しさもありました。そのため、コンクールに応募するためには、たくさんの方々の協力があったそうです。一つ一つの応募作品には、さわる絵本への熱い思いが込められていることが伝わってきました。トーク終了後も、トークに参加された方たちと一緒に絵本をさわったり、情報交換をしたり、さわる絵本が結ぶ縁は、さらに広がっていくようでした。

今回のトークは日本とイタリアをオンラインで結びながらの開催となりました。開始時刻はイタリア時間の朝6時でした。ピエトロさん、森泉さん、早朝から情熱的なお話をありがとうございました。プレゼンをしてくれたみなさまにも感謝申し上げます。当館で開催したワークショップからはじまった制作やつながりが継続していることは、当館にとっても嬉しい限りです。これからも、さわる絵本への関心を持ち続け、それぞれの制作に生かしていってもらえましたら幸いです。

講演会風景1

講演会風景2

講演会風景3