2025年2月23日 山本茂康さん こどもアトリエ

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ページ番号4001940  更新日 2025年3月2日

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2月23日(日曜日)に、3歳から小学生の子どもと保護者を対象にした造形ワークショップ「こどもアトリエ」を開催しました。講師は、デザイナーの山本茂康さんです。
山本さんは普段グラフィックデザイナーとして、企業のポスターやショーウインドウのデザインなどに関わっており、色やかたちをつかって仕事をしています。しかしながら、近年では見える人も見えない人もさわって楽しむことのできる「さわる絵本」に関心を持っているとのこと。今回のワークショップでは、さわった感じをつかって絵にする、「さわってたのしむ絵」をつくります。

最初に、山本さんは子どもたちを前に集めると、自作の絵本を見せてくれました。「普通の絵本となにが違う?」と問いかけると、いろいろな答えが返ってきます。「図鑑みたいに厚い!」「点字がついている!」などなど。実際にひらいてみると、ふわふわの綿やざらざらのヤスリなど、その絵本がさまざまな素材を用いたものであることがわかります。こうした「さわる絵本」は、布やひもなど、さまざまな素材を使っているため厚みがあり、また触りやすいように開くと平らになる構造となっているそうです。


講師の山本さん

山本さんがつくったさわる絵本をみんなで見る


次に、山本さんは綿をみせると、子どもたちにその触り心地をたずねます。その「ふわふわ」のちぎった綿を白い紙に貼りつけると、再び「なにに見える?」とたずねます。みんな悩みながら「雲」などと答えてくれます。そこで、山本さんは自分でつくった、ねこのさわる絵をみせてくれました。綿のふわふわの触り心地がいかされた作品です。
また、魔女の絵も見せてくれました。この絵は、実際に目の見えない方にも触ってもらったそうですが、なんとすぐに(5秒くらいで)この絵が魔女であるとわかったそうです!その方にわかった理由を尋ねたところ、布でつくったマントや、ストローと紙ひもで作った箒、毛糸でつくった長い髪などに触れて、すぐに魔女だとピンときたとのことでした。このように素材をいかしてつくると、見えない人でも楽しめる絵になるといいます。
今日はこんな風に、素材の触り心地などから連想して、作品をつくります。触り心地を大事にすることから、色のあるものではなく、白や透明の素材のみを使います。

作品作りの前に、まずはエクササイズです。小さな四角形の紙を、ひとりにつき4枚渡しました。その1枚1枚に少しだけ工夫を加えます。何も手を加えない、つるつるの触り心地のものから、握りつぶして広げてしわしわになったもの。横に2回折って細長くしてからぎゅっとにぎり、強い縦じわが出たもの。半分に折ってから細長くちぎり、フリンジのようにしたものと、同じ紙から異なる質感が3つも生まれました。それぞれを大きな紙に貼ると、さまざまな触り心地を楽しめる、サンプル帳になります。山本さんは、このように同じ素材も工夫して使うことで、さまざまな触り心地が生まれることを教えてくれました。
次はこのサンプル帳を、目隠しして触ってみます。今回、持ち物として、アイマスクや目隠しできる布を持ってきてもらいました。普段なかなかすることのない目隠しに、みんな少し緊張気味。でも、それぞれ熱心に触っていました。見えたものをさわるときは異なる触り心地を体験することができたのではないでしょうか。


サンプル帖をつくるこども


エクササイズの次は、いよいよ制作です!
紙やプラスチック、ビニールやひもなど、白や透明の多種多様な素材のなかから、好きな素材を選んでいきます。どんな作品をつくるかは自由です。つくりたいものから素材を選んだり、素材からつくるものを考えたり。こどもも大人も一緒になって、制作を行いました。山本さんは、子どもたちの様子を見て回りながら、どう作ったらいいかアドバイスしたり、コメントをしてくださいました。
制作が終わった後はまず、自分たちの作った作品を目隠しして触ってみます。さっきまで実際に作っていた、見たことのある絵のはずなのに、思ったのとは違う感触がした人もいるのではないでしょうか。また、家族で交換しながら触ってもらうなかで、知らない感覚と出会えた人もいたかもしれません。
そのあとは、みんなの作品を並べてみます。同じ白や透明の素材のみを用いていても、素材の使い方やモチーフはそれぞれ個性があり、見ごたえがありました。

山本さんは、「つくったものをさわってもらうのが好き」「とても嬉しい気持ちになる」と話してくれました。今回は、実際に山本さんが目隠しをしながら、こどもたちの作品をひとつずつ触って、なにをつくったのかを考えてもらいました。指先でやさしく丁寧にさわりながら、それぞれの作品をとても楽しんで鑑賞し、よかったと思ったところや面白いと思ったところなどをコメントしてくれました。
最後に、山本さんは、ぜひさわる感覚を大切にしてほしいこと、さわることを楽しんでほしいことを伝えてくれました。また、今回のワークショップは身近な素材をつかってできるので、またぜひおうちでもやってみてほしいと話してくれました。
山本さん、すてきなワークショップをありがとうございました!

今回のワークショップでは、山本さんが作ったもの以外にも、イタリアや日本のさわる絵本も用意し、空き時間にお読みいただきました。当館では、近年少しずつさわる絵本を収集し、展示をしたり、イベントを開催しています。
3月15日には、今回の講師である山本さんも登壇する、「さわる絵本」の講演&ワークショップも開催します。ご関心のある方は、ぜひご参加いただけますと嬉しいです。


制作中の様子

制作中の様子

作品を触っている様子

作品をさわっている山本さん