2025年6月29日 ギャビー・バザン講演会
6月29日、フランスのアーティストであるギャビー・バザンさんを招いての講演会を実施しました。絵本の制作やワークショップの実施など、さまざまな活動をしているバザンさん。日本では、『デザインのアトリエ 活版印刷』『デザインのアトリエ 石版印刷』(いずれ2023年、グラフィック社刊)という印刷をテーマとした絵本が邦訳出版されています。今回、バザンさんは在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本の招聘により来日しました。
今回の講演会のタイトルは「わたしの仕事」。バザンさんがこれまで手掛けてきた絵本についてお話くださいました。印刷をテーマとした本を、バザンさんは未邦訳のものも含めて3冊出版しています。最初に制作した「活版印刷」の本は、もともとアーティストレジデンスで制作したものでした。活版はヨーロッパの本の歴史とひもづいており、だからこそ本のかたちで出版されることに意味があったと言います。
「活版印刷」は、印刷所で働くおじさんを主人公に、活版印刷の歴史や仕組みを説明しています。「石版印刷」では重い石を扱うという点など、肉体的な部分を伝えることになり、さまざまな発見があったといいます。
一見カラフルな絵本ですが、元になった絵は白黒で描かれています。バザンさんはトレーシングペーパーにモチーフを描き、それをパソコン上で色をつけ重ねているそうです。普段は軽いスケッチを行ってから制作を行うため、最終的な完成形をみるときは、いつも驚きがあるといいます。
これらの印刷をテーマとした絵本は、たくさんの資料を集めたり、職人さんのところへと通ったり、インタビューを行って制作をしたそうです。そのとき、職人たちの体の動かし方やポジションに着目したといいます。写真やスケッチもたくさん行い、それらをもとにした小冊子も制作したそうです。
また、バザンさんが行っている他の活動についてもお話してくださいました。
こども向けのワークショップもよく行っており、今回日本でも複数回実施しています。フランスでも、モビールをつかったワークショップなどを行っています。こうしたワークショップから、いろいろなアイディアをもらうとバザンさんは語りました。フランスでは、子ども向けワークショップをよく行うそうですが、実施したあとは子どもの発言や行動を記録するようにしているそうです。
また、オブジェやアーティストブックなどにも関心があり、さまざまなテクニックをつかって制作されているそうです。制作数の少ない貴重なアーティストブックなどもありましたが、講演中にも実物を客席に回してくださり、実際に手にとりながらお話を聞くことができました。
バザンさんの意向もあり、質疑応答の時間を長めにとり、来場者と意見交換をする時間もみられました。フランスのおすすめのブックフェアや、シンプルな色使いが印象的なことに対して色選びで大切にしていることについてなどの質問がありました。そのなかで、日本のリソグラフやプリントごっこについての話が弾み、バザンさんから質問する場面もありました。
トークイベントの後も、参加していたイラストレーターとの交流を行っていたバザンさん。もうしばらく日本に滞在したあと、フランスに戻られるそうです。ご多忙の中、貴重なお話をいただきありがとうございました!
東京の市ヶ谷にある、「市谷の杜 本と活字館」では、この『デザインのアトリエ 活版印刷』をとりあげた展覧会も実施しており、本書の原画などもご覧いただけます。(展示は10月19日まで)実際に活版印刷の機械も目にすることもできますので、ぜひ足を運んでみてくださいね。