2025年8月10日 2025ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア総復習
8月10日、ボローニャ展期間中の恒例イベント「総復習」が今年も帰ってまいりました! 絵本評論家の広松由希子さんと当館館長・松岡希代子による、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(BCBF)の振り返りです。長年ボローニャに通う二人による息もぴったりな軽妙なトークは、毎年楽しみにしている方もいる人気イベントです。2025の総復習はどうだったのでしょうか。
前半は2025BCBFの概要や会場内外で行われるイベントについて、松岡の説明に広松さんがコメントを加えてくださいました。今年のブックフェアは3月末から4月初めという、日本からすると年度を跨ぐ4日間。(BCBFの時期は、年によって3~4月の間でひと月以上の幅があります)90か国から1500もの出版社がブースを出展しました。
日本からの出展として、とくにJBBYと国際交流基金の合同ブースをご紹介しました。広松さんと松岡はこのブースにも深くかかわり、ブックフェア内でさまざまなイベントも開催しました。このブース出展については、7月11日に当館でトークイベントをして詳しくご紹介しました。
BCBFが主催する数々の展覧会についてもお話をしました。毎年開催される展示だけでも、ボローニャ国際絵本原画展、ボローニャSM出版賞と国際アンデルセン賞の受賞者の記念展示、招待国の展示といったものをはじめ多数あります。さらに今年はブラスチラヴァ世界絵本原画展(BIB)60周年の記念展示やウクライナの展示などもあり、ブックフェア会場内のあちこちで魅力的な展覧会が行われていて、忙しい期間中には回り切れないほどです。当館で開催中のボローニャ展はもちろんのこと、特別展示をしているエンリケ・コゼール・モレイラとシドニー・スミスの作品もBCBF会場で展示されていたものですので、BCBFと日本のボローニャ展のつながりを実感していただけたのではないでしょうか。
今年のBCBF全体のテーマである「サステナビリティ」は、ラガッツィ賞の特別部門ともなりました。世界中から集まるラガッツィ賞の応募作から選ばれた150冊をショートリストとして紹介する「アメイジング・ブック・シェルフ」という試みは毎年行われていますが、今年はサステナビリティ部門の応募作のなかからもショートリストとして選ばれた150冊が展示され、2025年を象徴するものとなりました。
また、近年BCBFのなかで注目されているのが「dPictus」です。もともとはオンライン上のプラットフォームとして、世界中の絵本のエントリーの中から100冊を選んで紹介する「100 Outstanding Picturebooks」(広松さんもその審査員の一人)と、未出版のダミー本を紹介する「The Unpublished Picturebook」を運営していますが、それらを手に取って読めるとあって、dPctusのブースはいつも大賑わいです。
さらに、BCBF期間中にはボローニャの町中で絵本に関するイベントが開催されています。今年はフランスのアーティスト、ポール・コックスの大きな展覧会が開催されました。これまでに当館と長い交流のあるポールの大規模な最新作を、ボローニャで見ることができたのは、松岡にとって感慨もひとしおでした。ほかにも、日本の絵本作家etoさんの展示や、駒形克己さんの展示など、ブックフェア会場外でも見るべきものが山ほどあり、期間中は朝から晩まで大忙しとなります。
そして、ブックフェア会場内では驚くほどの数のトークイベントが開催されるのですが、広松さんと松岡はそれらのスピーカーも務めています。広松さんは、日本の赤ちゃんに関する講演会、上海の絵本コンクールに関するトーク、ASEAN諸国の編集者とのトークイベントのコーディネートなど。松岡は、駒形克己さんに関する講演、「絵本のまち板橋」の取り組みの紹介、さらに各国の絵本美術館によるトークイベントなどに登壇しました。これらの準備もあって、二人はブックフェア前から多忙を極めることになりますが、励ましあいながら乗り切っていた様子が伝わってきました。
BCBFは大きなイベントなので紹介しきれない側面も多々ありますが、今年のトピックとして上記のような内容を少々駆け足で紹介しました。目の回るような4日間ではありますが、すてきな出会いにあふれた充実した日々を想像いただけたのではないでしょうか。
後半は、今年のラガッツィ賞の絵本を広松さんがご紹介くださいました。出版された絵本に対して贈られるラガッツィ賞は、BCBFが主催する数々のコンクールのなかでもとくに長い歴史を誇り、国際的にも注目されます。フィクション、ノンフィクション、新人賞、赤ちゃん絵本、コミックといった部門のほかに、年ごとに特別部門が設けられ、今年は上述の通り「サステナビリティ」でした。広松さんは毎年「総復習」の機会に、ラガッツィ賞の絵本のなかから、おすすめやお気に入りを紹介してくれます。ラガッツィ賞はほとんどが海外の作品であるため、内容をつかむのが難しいことも多いのですが、広松さんのお話を聞くといっきに理解が深まります。造本の面白さや、絵本のなかの重要なディテール、時代性が映し出されていることへの指摘など、広松さんのコメントには絵本への深い洞察が感じられ、改めてラガッツィ賞の絵本を読み直したくなりました。
今年の「総復習」、いかがでしたか? ボローニャに行った人も、行かなかった人も、ボローニャ展をより楽しむためのヒントが詰まっていたのではないでしょうか。2026年のBCBFは4月13日から、また素敵な出会いがありそうです。
