2025年7月3日 夏のアトリエ・3日目

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ページ番号4001984  更新日 2025年7月15日

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この日のテーマは「Storyboading」です。キャラクターを生かして、どのように絵本のお話をつくっていくかを考えていきます。

午前中は、講義とエクササイズです。
まずクリスさんは自作の『どうする ジョージ!』を見せながら、お話をしてくださいました。この絵本は、留守番中の犬のジョージによっておきるさまざまなアクシデントが印象的です。例えば、我慢しなくてはいけないとわかっているのに、ジョージは思わずケーキを食べてしまいます。次々と起こるアクシデントとそれに対する反応によって、人はジョージを面白がったり、共感することができます。
作中のアクシデントは、キャラクターに注目させる力を持つだけでなく、キャラクターにさまざまな感情をもたらします。キャラクターがひとつの媒体となり感情を伝えることができると、クリスさんは話します。人は別の人に関心を持つものであり、エピソードだけを語るのでは科学的な本になってしまうとのことでした。

クリスさんは「Powers of 10」という書籍も紹介してくれました。小さなものを写した写真が、ページをめくるごとに、段々と大きなもの(最後には宇宙に)へと拡大されていきます。これを受けて、クリスさんは小さなアリのキャラクターを考えたそうです。世界がどれくらい大きいのかと疑問を持ち、自分よりも大きな生きものに出会っていくというものです。こうした物語に、魔法的な要素も入れて制作したいと思ったそうですが、無理のある話かもしれないと考えるようになったと言います。
そこで、眠たいアリのあくびがだんだんと大きくなっていく・・・というお話を考えたそうです。編集者には「これってお話?」と聞かれたそうですが、8カ月の姪に見せたところ面白がってくれたそうで、そこから『ぼくはちっともねむくない』ができていったそうです。
また『うみへいった ちいさなカニカニ』は、大きな波を描きたいというところから発想が浮かんでいったといいます。波がやってきて、バシャン・・・を繰り返したあと、カニカニは大きな海へともぐっていきます。

こうしたストーリーを考えるとき、どんな場面になるのかを想像しながら、クリスさんはスケッチをたくさん描くそうです。ひとつの紙にマス目を描き、そこに小さく描き込んでいきます。こうすることでお話が一望できます。これが「ストーリーボード」です。この物語を考えるとき、クリスさんはなんと27通りのストーリーボードを制作したとのことでした。
ここで改めて、このワークショップの終わりには、ラフでいいので自分のお話がどのような流れなのかをまとめたストーリーボードをつくり、その中から2見開きを選んで描くことが課題であると伝えられます。

このストーリーボードを作るのに向けて、講義のあとはエクササイズを行いました。
まずA4のコピー用紙を6つの枠に分けます。それぞれ3分間で、左上にひとつの絵とちょっとしたテキストを書き、次の人に渡します。渡すとき、自分がつかった筆記具も一緒です(これは全体に統一感を出すため、だそう)。6人組となってこれをつづけ、最後の人はお話の結末を決め、ひとつのストーリーをつくりだします。
最初、3分という時間に焦っていた受講者たちですが、開始の合図とともに必死にペンを動かします。最後まで完成したものを見た1コマ目の担当者は、自分が想像していたのとは違う展開になっていたのに驚きます。

もうひとつ、別のエクササイズも行いました。これも6人組で行うもので、6枚のコピー用紙を用意します。1枚目には絵を描き、それを渡された次の人は絵にあうテキストを2枚目に書きます。3枚目の人はそのテキストだけを見て絵を描き・・・というのを繰り返します。渡された人は一番上にのっている紙に描かれたものしか、見ることはできません。このエクササイズでは、絵がテキストに、テキストが絵に及ぼす影響を見ることができます。
どちらのエクササイズも、できあがったものを壁に貼り、みんなで鑑賞を行いました。自分たちが意図しない方向に物語が進んでいくこと、その面白さを感じているようで、受講者同士で話が盛り上がっていました。自分の描いたアクションが、次の展開を促し、新しいストーリーを生み出します。ストーリーを考えるのが苦手だという人も多いなかで、大変刺激になったのではないでしょうか。


エクササイズ中の様子

エクササイズでできたストーリーの神


午後は最終日に向けての制作のつづきをそれぞれ行いました。
こうした制作の合間には、クリスさんによるポートフォリオレビューも平行して行っています(受講生のひとりが、看板もつくってくれました)。ひとり15分ずつ、自分がもってきたポートフォリオやダミー本などを見せながら、意見を求めたり、相談したりします。短い時間ではありましたが、クリスさんは大変丁寧に話を聞き、アドバイスや感想を話してくれました。

夏のアトリエもこれから後半戦です!


ポートフォリオレビューの様子

ポートフォリオレビューの看板