2025年7月6日 クリス・ホートン講演会

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ページ番号4001990  更新日 2025年7月24日

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絵本作家、イラストレーター、デザイナーのクリス・ホートンさんを招いての講演会を実施しました。アイルランド出身で、現在ロンドンを拠点に活動しているクリスさん。『ちょっとだけまいご』をはじめ、これまで7冊の絵本を出版されています。また、昨年最新作である「The History of Information(情報の歴史)」を出版しています。
クリスさんは2025ボローニャ展の審査員をつとめています。そのご縁もあり、今年板橋区立美術館で実施した、イラストレーター向け絵本づくり講座「夏のアトリエ」のため、来日してくださいました。5日間のワークショップを終えたばかりのクリスさんでしたが、終始笑顔でご講演くださいました。今回は、クリスさんのお仕事全体に焦点をあて、お話いただきました。

最初に、終えたばかりの「夏のアトリエ」について触れてくださいました。室内には、夏のアトリエのエクササイズで制作されたものがいくつか貼られたままとなっており、どんなことを実施したのかについて少しお話くださいました。
また、今年のボローニャの審査についてもお話くださいました。審査にあたり、2万枚以上のイラストレーションをみて、1月に審査員全員が集まって話し合ったそうです。その審査のなかで印象に残ったいくつかの作品をクリスさんが描いています。それは今年の展覧会カタログに掲載されており、日本人入選者であるumecoさんの絵もみられます。
クリスさんが絵本作家になったり、今のような仕事をしているのは、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(以降、BCBF)がきっかけであるとのこと。

元々、ダブリンでグラフィックデザインの勉強をしていたというクリスさん。そのころインフォグラフィックやグラフィックデザインの歴史に関心を持っていたそうです。卒業後、イラストレーションの仕事をはじめました。そのなかで、いまのスタイルになるきっかけとなったのは、フェアトレードの商品を取り扱うピープルツリーとの仕事でした。グッズのデザインなどを行っており、以前の来日時には自由が丘にあるピープルツリーの店舗にイラストを描いたりしています。ピープルツリーの仕事で、鳥のイラスト入りのカードをつくったクリスさんは、これを絵本にしたら面白いかもしれない、と考えるようになったそうです。背景に色々な生き物がいるような物語を思いつき、2007年にBCBFに持ち込んだそうです。その時、韓国の出版社との出会いがあり、『ちょっとだけまいご』の出版につながりました。『ちょっとだけまいご』は、説明的なテキストは入れず、絵で伝えるというかたちをとっており、これが自身のやり方になったといいます。
また、『しーっ! ひみつのさくせん』をもとに、白黒のコラージュで絵本のラフをつくっていることもお話くださいました。白黒かつコラージュだと、絵を簡素化できるのがよいとのことで、つくったものをコンピューターに取り込み、色を変えて制作しているそうです。

そのあとは、最新作である「The History of Information」についてお話くださいました。本書は、Information、つまり「情報」の歴史を10万年前から遡るノンフィクション・ブックです。情報というテーマをクリスさんらしいポップなビジュアルを用いながら解説しており、子どもから大人まで楽しめるような構成となっています。この本は刊行されるまでに10年以上の歳月がかかっており、クリスさんにとっても大切な一冊です。
情報の歴史とは、コミュニケーションやメディアの歴史であるとクリスさんは話します。この本を考えるきっかけとして、イラク戦争などの偏向報道を目にしているなかで、情報の歴史をわかりやすくまとめたものを多くの人が読めば、さまざまな情報を理解するうえで有用なのではないかと考えるようになったことがあるそうです。その後2006年に、バークレー大学のオンライン講義を聞くようになったクリスさんは、まさに「情報の歴史」という二つの授業と出会いました。自分の「グラフィックで歴史を伝える」という関心と重なっていたこともあり、夢中になっていったといいます。授業を受け持っていた二人の先生にメールをし、2009年頃からこの本のイメージを描き始めたそうです。

クリスさんは内容についても詳しくお話くださいました。
本書は、Language/Drawing/Writing/Printing/Science/News&Newspaper/Network/Broadcast/Computer…といった章で構成されており、10万年前から現代へと向かうようにしてその歴史が説明されています。基本的には、バークレーの講義を参考にしているそうですが、唯一「Drawing」については、クリスさんが必要であると感じて追加したそうです。勉強家で研究熱心なクリスさんらしく、充実した内容であることがお話からも感じ取ることができました。
また、質疑応答のなかで、「The History of Information」の日本語版の刊行についてのお知らせもありました。東京書籍にて12月頃の刊行を予定しているそうです。

本講演会は、クリスさんの作品が、旺盛な知的好奇心や深い知識から生み出されていることが伝わってくるものだったのではないでしょうか。また絵本づくりにおいても、試行錯誤を繰り返しながらいまの自分のスタイルを生み出したことが伝わってきました。

さまざまな仕事で世界中を旅しているクリスさん。お忙しい中、ご講演いただきありがとうございました!また、連日素晴らしい通訳をつとめてくださった森泉さんにも深く感謝申し上げます。

 

クリスさんと森泉さん 絵本を持っている

自己紹介をするクリスさん スクリーンには自作の書影が映っている

ピープルツリーで制作した鳥の絵を見せながら話すクリスさん

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