2025年6月27日 オープニング記念トークイベント 入選者にきく
ボローニャ展の初日には、オープニングイベントとして、入選者3名によるトークイベントを開催しました。登壇してくださったのは、日本人入選者のうち、うめだよしのさん、神鳥海南江さん、波田佳子さんです。当館学芸員の高木が聞き手をつとめました。
なお、今年はこの3名の他、umecoさん、木村友美さん、小池結衣さんの計6名の日本人が入選しています。
トークの前半では、それぞれの応募作品などについてお話いただきました。
うめださんの「花といっしょ」は、青い馬やマンタなどの生きものが鮮やかな色で描かれている作品です。娘さんとのやり取りのなかで、「花」をモチーフとした作品を制作されたといいます。オイルパステルとアクリル絵の具を主に使用しており、さまざまな色を重ねてからスクラッチするなど、さまざまな技法で描かれています。
産休に入ったことをきっかけに、パレットクラブで絵本を学び始めたうめださん。その講義のなかで教えてもらったコンペのなかに、ボローニャ展があったそうです。ストーリーができていなくても、5枚の絵があれば応募できることを知り、応募に至ったとのことでした。今回の応募作品も、入選が決まってからストーリーを考え始めたといいます。
神鳥さんの「ゆうぐれ」は、セピアのような抑えられた色調で、少女や動物たちが描かれています。茶色のインクと色鉛筆を使用して描き、それをパソコンで調整しているそうです。普段は水彩などでカラフルな作品を制作しているそうですが、スケッチなどの方がすっと描ける印象があったとのことで、今回の応募作で少ない色数での制作にチャレンジしたそうです。
ボローニャ展については、通っていた大学図書館に図録が置いてあり、それを見たことがあったとのこと。中学生のころから絵本という表現に惹かれていたそうで、酒井駒子さんやたかのももさん、出久根育さんの作品が好きで、大人っぽい作品も受け入れてくれるのではと思ったことから、ボローニャ展への応募を決めたといいます。
2021年に続き、2度目の入選となった波田さん。「ちいさい かわいい さくらんぼ」は、オイルパステルを基本に、水彩色鉛筆などをもちいて制作されました。緑色の鳥の絵がまず生まれ、そこからさくらんぼを主人公にしたお話が浮かんできたそうです。もともと生粋のイラストレーターであると言う波田さんは、元々ポスターなどの、見た瞬間になにかを感じられるような、パッと立ち止まらせられる絵が好きだそうです。入選作にもそうした雰囲気が感じられます。
なお、ボローニャ展は2021年よりオンライン応募に変更となっています。そのこともあり、以前の応募時よりも楽になったと、波田さんは話してくださいました。このように応募がしやすくなったこともあってか、応募者も増加傾向にあります。しかしながら入選者の数は80名程度と変わらないため、近年ではファイナリスト(300名ほど)も公開されるようになりました。
また、3名ともに今年のボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアに参加しています。それぞれ行く予定はなかったとのことでしたが、入選を機にブックフェア行きを決めたそうです。後半では、ブックフェアでの体験をお話しくださいました。
ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアは版権を売買する見本市であると同時に、世界中からやってきたたくさんのイラストレーターが、多くの出版社や編集者とミーティングをする場でもあります。そこでの出会いから、新しい絵本が生まれることもあるため、イラストレーターは関心のある出版社とアポイントを取り、出版社に見せるためのさまざまな準備をすることになります。
今年の入選の発表は1月末。そして今年のブックフェアは3月31日から4月3日だったため、大変短い期間でしたが、3名ともポートフォリオやダミー本の制作を行ったそうです。また、神鳥さんやうめださんは原画も持っていったとのことでした。
トークの中では、それぞれボローニャでの大変だったことや、出版社から言われて印象的だったことなどをお話してくださいました。3名ともあまり英語が得意ではないとのことで、事前に打ち合わせをし、現地では通訳のシェアを行ったそう。入選が縁で、さまざまな情報交換も行ったとのことでした。
今回のブックフェアでのミーティングをきっかけに、うめださんや神鳥さんは海外の出版社とのやりとりを進めているそうです。また波田さんも、今回の入選作をもとにした絵本の出版に向けて動いているとのことでした。それぞれ、入選作を通して、今後につながっていっているようです。
最後に、入選して変わったことやよかったことを伺いました。うめださんは、とにかくやってみること、自分で動いてみることの大切さを感じたとお話くださいました。神鳥さんは、優しい人に会うことが多かったとのことで、相手は一生懸命絵本をつくっている人たちなので、つたなくても一生懸命つくったものなら伝わるものがあると思ったとお話くださいました。また、波田さんは自分の伝えたいもの、好きなものは貫いた方がいいことや、自分の世界を楽しめるように、これからつくるもので楽しんでやる活動をベースにしていきたいと語ってくださいました。
今回みなさんには、作品への思いや、ボローニャでの体験などを臨場感もってたくさんお話くださいました。今後ボローニャ展に応募したり、ブックフェアに行くことを目指す方々にとっても刺激になる時間だったのではないでしょうか。
うめださん、神鳥さん、波田さん、ご多忙の中ご登壇いただき、ありがとうございました。
来年、2026ボローニャ展の応募要項もすでに公開されており、応募期間は7月18日から11月3日までとのこと。来年のブックフェアは、例年より少し遅く、4月13日から16日までです。応募の詳細は、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアのHPをぜひご覧ください!