2025年7月9日 さわる絵本づくり講座・2日目
2日目、最終日です!
昨日は大変盛沢山の一日で、消化しきれなかった参加者も多いかもしれません。今日は15時頃まで制作し、発表会を行います。
作業を始める前に、ミケーレさんからお話がありました。今回制作するものは種のようなものと思ってほしいと話します。また、テキストについて、今回は詩のような、暗示させるようなテキストを提案したのは、少ない言葉はたくさんのことを伝える力を持っているためであるといいます。あるイタリア人の書いた本のなかで、日本人とイタリア人の違いについて「言わぬが花」という言葉でそれを表現していることも紹介してくれました。口に出して言わないことでより深い趣が生まれる・・・という意味を持つ言葉は、「さわる絵本」をつくるうえでのひとつの指標になるのではとのこと。今回の少ない素材を用いて、素材に語らせる…というやり方と重なるとともに、そのやり方だからこそより豊かに語る可能性を持っています。
また、同じ本のなかで、雨について「猫毛雨」という言葉が紹介されていたそうです。(これは九州の方の方言のひとつで、小雨を表現しているそうです)この言葉のように、テキストは絵よりも少なく書かれていればより想像しやすいといいます。例えば猫を表すときも、猫を象徴するもの使うなど、説明的な言葉を使う必要はなく、「なんなんだろう?」と思わせるものがよいとのことでした。
もともと、ミケーレさんは20年ほど教師をしていたそう。ミラビリアの活動のなかでも言葉やパフォーマンスなどを担当しているミケーレさんは今回漢字と触れ合うなかで、一文字で表せてしまう漢字に関心をもち、いつか漢字のさわる絵本を作ってみたいとお話してくださいました。
お話のあとは制作です!時間配分を考えながら、素材にふれ、どう使うかを考えながら制作をしていきます。ときどきミシンの音が響くことも。ミラビリアのお二人は、みんなの机をアドバイスしながら回ります。
15時頃に作業は終了。片付けをしてから、発表会です。
発表会では、机のうえに作品を置き、希望者から自分の本について3分ほどでお話いただきました。それぞれ自分が選んだテーマ、「THE WISH」か「THE TRAVEL」についてお話をしたうえで、どんな絵本になったかを紹介します。
今回、制作時間は正味6時間程度とかなりタイトなスケジュールでしたが、本当に多種多様な物語、作品が生み出されていました。世界一周をしたいという夢から発想したもの、生きものの成長を表現したもの、小さな蜘蛛の旅をあらわしたり・・・と内容はもちろん、巻物のようなかたちをしていたり、着られるマントのようなかたちでつくったりと、チャックを閉める音も取り入れたり、かたちや素材の取り扱い方など、驚くような発想で作られた作品ばかりです。
発表時からは、ミラビリアから言われていた通り、素材と向き合いながら、抽象的にどう表現するか模索している様子が感じられました。発表のあとには、ミラビリアからのコメントやアドバイスも入ります。
今回のワークショップについて、緊張していたというお二人でしたが、参加者のレベルの高さに驚きつつ、みんなの丁寧な制作ぶりについて、よく考えて制作していたことが伝わってきたとお話してくれました。一人一人がまったく違う作品を真摯に制作していたことが、とても嬉しかったようです。最後にはみんなの作品を見合い、ワークショップは終了となりました。
今回のワークショップは、普段使うことができていない身体の感覚を意識させる、参加者それぞれに新しい発見をもたらすようなものだったのではないでしょうか。初日に行ったさまざまなエクササイズは、「さわる絵本」をつくるうえで大切なことを少しずつ教えてくれるものでした。また、彼らの言うように「素材」や自分の感覚を意識して制作する経験によって、さまざまな刺激を受け取ったのではないでしょうか。私たちは五感で感じたり、じっくりと素材について向き合うことが、とても少なくなってきていると思います。しかしながら、そうした経験が、皆さんのなかにある様々な記憶や物語を引き出している様子を感じられました。今回の経験を、ぜひ次の作品制作に生かしていただけると嬉しいです。
ご多忙な中にも関わらず、素晴らしいスケジュールを組んで進行してくださったミラビリアのおふたり、ありがとうございました!盛沢山の内容でしたが、素晴らしい時間管理のおかげで、無事に二日間ですべての行程を実施することができました。いつも笑顔で、参加者にアドバイスしている姿が印象的でした。進行やお話は主にミケーレさんが行い、ジョルジャさんはそのサポートを行いながら、制作中には技術的なアドバイスをしてくれていました。
また、夏のアトリエに引き続き、素晴らしい通訳で現場をサポートしてくださった森泉文美さんにも心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました!