2025年10月3日 マックス・デュコス氏講演会

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ページ番号4002012  更新日 2025年10月8日

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10月3日に、フランスのアーティスト、マックス・デュコスさんをお招きして講演会を行いました。デュコスさんは「フランス読書の秋2025」の一環として、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本の招聘により、初めて来日されました。デュコスさんは当館での講演会の前日に東京に到着し、各地で講演会やワークショップなどのイベントが予定されています。そのなかでも当館での講演会は最初のイベントとなりました。

フランス南西部に位置するボルドー出身のデュコスさんは、絵画制作や絵本の出版で広く活躍されています。この夏には初の日本語版絵本「おじいさんと池」(日本語版:名古屋外国語大学出版会、訳・木内尭)が出版されました。講演会では、これまでに出版した絵本を取り上げながら、自身の制作にとって大事な事柄についてお話くださいました。
デュコスさんの絵本は、ある「場所」を舞台にしたものが多く、なかでも建物を描くことには強い関心があるそうです。2006年にデビューした際の絵本も、近代建築を思わせる家を舞台にした宝探しの物語でした。また、美術への造詣も深く、さまざまな絵本のなかに美術作品が登場し、子どもにも大人にも知的な興味を刺激してくれます。さらに、幼いころから日本のたくさんのアニメを見て育ったというデュコスさんは、それらの一場面を想起させるような印象的なシーンを絵本の中に描くこともあるそうです。
こうした絵本の多くにはグアッシュを用いてきましたが、線を描くことのできる画材を求めて近年はインクも使い始め、「おじいさんと池」のような表現が生まれたということです。一方で、最も好きなのは油彩画の制作で、ずっと描いていられたらいいのにと思うほどだそうです。出身地への思いもお話の端々から感じられ、ボルドーの海辺を描いた絵画シリーズなどもご紹介くださいました。
そして、話はパリでの学生時代のことに移っていきました。デュコスさんが在学中に描いた作品は2004年のボローニャ国際絵本原画展に入選しています。この展覧会は毎年日本を巡回しており、当館は同年夏にその入選作品を展示していたのです。デュコスさんにとって、まだ絵本を出版していない20代半ばの頃にボローニャ展に入選したという経験は、制作を続けるうえで大きな自信となったそうです。また、デュコスさんはパリでの学生時代に駒形克己さんの授業を受け、のちに制作した絵本「化石」には駒形さんの教えや絵本からの影響が表れているといいます。ロゴマークのデザインや展覧会の開催などにより当館と関わりの深かった駒形さんからデュコスさんもインスピレーションを受けていたということで、不思議な縁を感じました。
講演の最後にデュコスさんがおすすめするフランスの絵本やイラストレーターもご紹介くださり、もりだくさんの内容となりました。

デュコスさんのお話の後には、キャラクターの作り方や、出版社への作品の提案など、参加者からの質問にも丁寧に答えてくださいました。講演会終了後には絵本のサインに応じたり、参加したイラストレーターたちの作品を見たり、穏やかなデュコスさんのおかげで終始温かな雰囲気に包まれていました。会場にはデュコスさんと同じく2004年に入選した日本のイラストレーターも来ていて、当時の展覧会カタログを懐かしく見返す場面もありました。ボローニャ展に入選したアーティストが、のちに絵本作家となり、20年の時を経て来館してくれたということで、当館にとっても感慨深い講演会となりました。
今回の講演会は、当館と在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本との共催で行われました。開催のためにご協力くださった皆様に心より感謝申し上げます。

 

 

自作の絵本を手に持つ講師

講演会の様子

講演をする講師