2025年12月6日 戦争と子どもたち展 スライドトーク
開催中の「戦後80年 戦争と子どもたち展」に関連して、スライドトークを実施しました。11月15日につづき、2回目の開催です。
本展の担当学芸員より、展覧会の見どころなどをお伝えしました。
本展開催の10年前である2015年、戦後70年に関連した展覧会が各地で開催されました。
当館でも、「館蔵品展 近代日本の社会と絵画 戦争と表象」と題し、芸術家たちがどのように戦争と向き合い、表象したのかを検討する展覧会を行っています。
その際にも展示された、麻生三郎による≪一子像≫(1944年、板橋区立美術館蔵)や、松本竣介の≪りんご≫(1944年、個人蔵、板橋区立美術館寄託)のように、新人画会の画家たちはこの時期子どもたちを描いた作品を残しています。これらの作品や、麻生三郎による言葉などから着想を得て、戦時中に子どもを描いた作品に着目した本展の開催に至りました。
本展は5章立てとなっています。出品作品の中からいくつかの作品を紹介し、見どころをお伝えしました。
例えば、具体美術協会の創設者としても知られる吉原治良は、戦時中のある一時だけ、子どもや小鳥を描いています。出品作である≪防空演習≫(1944-45年頃、大阪中之島美術館)においても、せわしなく動く大人たちとともに、防災頭巾をかぶった子どもたちが描かれています。後年、戦争のただなかにあって、人間を描かずにはおさまらなかったということを、吉原は回想しているそうです。
また、水原房次郎の≪夏の夜 戦果をきき入る少年達≫(1942年、福岡県立美術館)では、蚊帳のなかに寝そべる少年たちがラジオを聴いている姿が描かれています。遺族の方のお話によると、本作は画家が当時暮らしていた池袋で描かれたものだそうで、近所の子どもたちを集めてモデルになってもらったというエピソードもあるとのことでした。
松本竣介による≪りんご≫は、1944に開催された新人画会展の出品作です。肌の質感を出すために、画面の一部には指跡がつけられているのが見て取れます。ほかの作品ではこうした取り組みは見られないそうで、実験的な作品でもあるそうです。まっすぐと前を向く子どもは、松本のルーツである岩手でも生産されている「りんご」を手にしており、どこかポエティックな雰囲気が感じられます。
戦後に描かれた、楢原健三の≪街頭にて≫(1946年、個人蔵)は、孤児と思われる二人の子どもが描かれています。写実的に描かれているからこそ、ストレートにその状況が伝わってきます。日展で活躍した楢原は、展覧会の開催された上野などで、こうした子どもを見て描いたのだと思われます。
本展ではこのように、さまざまな姿の子どもたちを目にすることができます。ぜひ実際の作品は、展示室でご覧ください。
また、展覧会図録には、より詳しい作品についての紹介や論考なども収められていますので、そちらもぜひご覧いただけますと幸いです。
展覧会は1月12日(月曜日・祝日)までの開催です。
みなさまのご来館、お待ちしています!

