2025年11月16日 こどもアトリエ「葉っぱで版画をつくろう」
11月16日(日曜日)、こどもアトリエを開催しました。講師は、銅版画家の小野寺美帆さんです。
小野寺さんは、昨年の「2024イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」に入選されました。その入選作も、銅版画で制作された作品でした。銅版画とは、銅板に線を彫り、その溝にインクを流し込み制作する版画技法のひとつです。今回は「版画」を親しんでもらえるような、身近な葉っぱを使ったワークショップを開催しました。
最初に、小野寺さんは「版画」について少しお話してくれました。
版画は、紙などに直接描く絵とは異なり、「版」と呼ばれるものを制作し、それにインクをつけるなどしたものを紙に刷ることで、作品が完成します。多くの場合、ひとつの版をつくると、何度も同じ絵を刷ることができます。身近なものだと、スタンプなども版画の仲間です。ひとつの版を制作すると、同じ作品をたくさんつくって、たくさんの人に見せることができるのが版画の良さだと、小野寺さんはお話してくれました。

それから、今回のワークショップで制作するものを、小野寺さんが実演してくれました。みんな小野寺さんの手元が見える位置まで移動し、お話しながら制作の様子を見ていきます。
片面がシール状になったスチレンボードに、拾ってきた葉っぱを貼り付けていきます。そのままのかたちを生かしたり、ハサミで切ってかたちを変えたりなどして、自由に葉っぱを貼り付けていきます。これで版は完成です。
しっかり貼り付けた後、スポンジで絵具をポンポンとのせていきます。絵具を全体にのせ終わったら、コピー用紙をそのうえに重ねて、手でこすっていきます。全体をしっかりとこすったあと、ゆっくりと紙を持ちあげると……版画が刷りあがります!できあがったものを見せると、「きれい!」という声があちこちから上がりました。この作品にタイトルとサインを入れて完成です。
この版は、別に色をのせると、何度も刷ることができます。同じ葉っぱをつかった版でも、色味や濃さが異なることで、印象が変わることも実際に見せながら説明してくれました。楽しそうにつくる小野寺さんの様子をみて、子どもたちも段々とソワソワとしてきます。


つくり方がわかったら、実際に制作にはいりました。今回、「葉っぱ」を持ってきてもらうように参加者のみなさんにはお願いしていました。ちょうど秋も深まり、足元に落ち葉も増えてきた季節です。それぞれ、いろいろなかたちの葉っぱを持ってきてくれていました。まずはその中から好きな葉っぱを選び、ボードに貼り付けていきます。どんどん好きな葉っぱを貼っていく人もいれば、細かく切ってみたり、リボンなどのかたちをつくる人も。
版ができた人から、絵具をのせていきます。今回用意したのは、赤・青・黄色・白・黒・金色です。黒や金色は、小野寺さんのおすすめの色でもあります。好きな色を一色だけつかう人もいれば、場所によって色を変える人、色を混ぜて新しい色を作る人と様々です。絵具の載せ具合でも、色の風合いは変わってきます。
そこまでできたら、紙をのせてごしごしこすっていきます。刷り上がったのを見たとき、歓声がさまざまなところであがりました。自分が思っていたのと違うように色や線が出るのが、版画の面白いところではないでしょうか。葉っぱを刷っているはずなのに、色によっては違う何かにも見えてきたり、抽象画のような雰囲気にも感じられます。
同じ版で異なる色のバージョンをつくったり、別の葉っぱを使って新しい版をつくったり……みなどんどん制作を進めていきました。小野寺さんも参加者の方に声をかけて、アドバイスしたり、工夫している点についてお話していました。刷り上がり、タイトルとサインが入ったものは、前の壁に貼っていきます。刷っていくごとにコツをつかんでいったのか、色味などもよりバリエーションが豊かになっていきました。保護者の方も一緒に制作をしていったので、最終的にたくさんの版画が壁一面に貼られることになりました!


ワークショップの最後には、小野寺さんと一緒に完成作品の鑑賞を行いました。それぞれ自分の一番のお気に入りの作品を教えてもらいます。葉っぱをつかうことや、版の大きさ、使う絵具の色などはみんな同じですが、できあがったものはそれぞれ全く異なります。それぞれの人が好きなものやこだわりが一枚一枚から見えてきて、とても充実した時間だったのではないでしょうか。小野寺さんの明るい雰囲気もあり、参加者も終始楽しそうに制作していたのが印象的でした。
今回のワークショップで、ぜひ版画を身近なものと感じてくれると嬉しいです。
小野寺さん、素敵なワークショップをありがとうございました!

