2026年9月13日 カミーユ・ヴァノフ氏講演会

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ページ番号4002100  更新日 2026年9月16日

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9月13日(日曜日)に、カミーユ・ヴァノフ氏の講演会を行いました。
ヴァノフ氏は、ベルギーのイラストレーター、バンド・デシネ作家です。2025年に刊行された『Sentimental Kiss』というバンド・デシネ(フランス語圏のコミックス)作品で、2026ボローニャ・ラガッツィ賞コミックス部門を受賞しました。本作は、今年のボローニャ展でも展示していたので、ご覧になった方もいるかもしれません。ボローニャ・ラガッツィ賞には2021年よりコミックス部門が登場していますが、フランス語圏のバンド・デシネもよく選ばれています。コミックス部門は6~9歳の部、10~12歳の部、13歳以上の部(ヤング・アダルト)に分かれており、今回の受賞作は13歳以上の部で受賞しています。
今回、駐日ベルギー大使館 ベルギー王国フランス語共同体政府 国際交流振興庁(WBI)の協力のもと、ヴァノフ氏の講演会を実施することができました。モデレーターには、フランス語翻訳者であり、バンド・デシネの専門家でもある原正人さんにお越しいただきました。通訳は、善本知香さんです。

はじめに、ヴァノフ氏にご自身の仕事や、『Sentimental Kiss』の制作過程について、お話いただきました。ベルギーで生まれたヴァノフさんは、小さいころから日本のアニメやマンガに関心を持っていたそうです。特に『Sentimental Kiss』には、「カードキャプターさくら」や「セーラームーン」といった日本のアニメやカルチャーからの影響も強くあると言います。元々は児童書の仕事や、ZINEの制作などを行っており、今回ははじめてのバンド・デシネ作品となります。
『Sentimental Kiss』は、恋人同士であるティーンの女の子シャルリーとアニマを主人公にしたお話です。夏のバカンスを終え、新学期に入った学校では「魔法」や「秘密の世界に行く」という噂が広まっています。アニマも「魔法」に目覚め、ふたりで魔法少女に変身し、秘密の世界に行くことに。しかしながら、それぞれに異なる友達ができたりと、さまざまな変化のなかで思春期の二人は成長し、すれ違っていきます。本作においては、性自認や性的同意といったテーマも自然な形で物語に描き込まれていますが、メタファーとしての魔法や秘密の世界を使うことで、セクシュアリティを強く押し出さなくても表現することができたと、ヴァノフさんは語ります。
制作過程についても、画像や実際のものを見せながら紹介してくれました。小さな紙にストーリーボードを描き、それを簡易なシャープペンシルで本描きしたものをスキャンし、パソコン上で色を付けたり、修正しているとのことでした。またファッションやコスチュームも、本作の魅力のひとつです。例えばアニマはボーイッシュな格好で、シャルリーはもう少しガーリーです。ストーリーを決定づけるものでもあるとのことから、一つ一つのシーンにおいてこだわって選んでいるとのこと。ヴァノフさん自身も、ファッショナブルであり、本人の関心も伺わせます。日本のストリートスナップ雑誌である「FRUiT」などのファッションも参考にしているそうです。絵柄もポップで軽やかでありつつ、日本のアニメーションの影響を受けているという色味など、作品がどのように構成されているかをお話してくださいました。

その後、原さんにモデレーターとして入っていただき、更に詳しく『SentimentalKiss』についてお話していきました。原さんは、これまでさまざまなバンド・デシネを翻訳されており、そのご経験をもとにさまざまなお話をしてくださいました。まずは本作のストーリーラインを簡単に紹介しつつ、ヴァノフさんに質問をしていきます。例えば、日本のマンガは雑誌連載をもとに書籍化されますが、ベルギーではコミック雑誌がほとんどないそうで、ほぼ完成した企画を出版社に持ち込んで最初から書籍として出版するのが一般的だそうです。そうした日本のマンガとは異なる発表形態が、作品にも影響を与えているのかもしれません。また、今回は大手出版社ではなく、インディペンデント系の出版社での刊行だったそうです。
原さん曰く、バンド・デシネは元々男性の読み手・書き手が多かったとのことですが、これは書き手も女性で、描かれているのもティーンの少女たちです。いまは女性の書き手も増えており、ヴァノフさんは現代のバンド・デシネの最先端にいる人だと原さんは言います。また、本作は日本のカルチャーが随所にも感じられる作品であり、作品タイトルも日本の同名の曲から引用されています。日本のカルチャーを受け取った作家が、ベルギーで出版されたバンド・デシネに日本的な要素を組み入れていることに、感慨深いものがあるともおっしゃっていました。

最後には質疑応答を行ったり、サイン会となったりと、イベント終了後にはヴァノフさんや原さんと、参加者との交流なども見られました。また、当館にある過去のボローニャ・ラガッツィ賞コミックス部門に選ばれた書籍を並べ、手に取ってお読みいただける時間ともなりました。ぜひみなさんにとっても、バンド・デシネや海外のコミックスに触れる機会となりましたら幸いです。

講演をしてくださったヴァノフさん、モデレーターをつとめてくださった原さん、そしてイベントの機会をご提供くださった駐日ベルギー大使館の皆様に御礼申し上げます。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。


ヴァノフ氏と通訳の善本さん

ヴァノフさんの講演の様子


ヴァノフさんと原さんとのトーク

サインの様子