2022年7月31日 若月眞知子さん講演会

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ページ番号4001628  更新日 2022年8月6日

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7月31日にはブロンズ新社代表の若月眞知子さんの講演会を開催しました。長年ボローニャのブックフェアから刺激を受け、またブックフェアにも影響を与えてきた若月さんに、その絵本作りについてたっぷりお話いただきました。

お話はブロンズ新社の歴史から。海外文芸の翻訳からスタートし、対談集、評論、新しいスタイルの伝記、子ども向けの環境問題の本、写真集などを手がけていた若月さんですが、絵本を始めるきっかけのひとつは、ニューヨーク旅行で子ども向けの分厚いアクティビティブックを見つけたことでした。そこからヒントを得て刊行したのが五味太郎さんの『らくがき絵本』(1990年)です。子ども向けとしては異例の300頁を超える本ですが、30年以上も増刷を続けており、子どもの本の息の長さを実感した作品だそうです。

そして、1994年に出版した荒井良二さんの『はじまりはじまり』が、若月さんをボローニャにいざなうことになります。この年のボローニャのブックフェアで日本の絵本の特集展示があり、そのためにこの絵本の原画を持って現地へ行かれたのだそうです。初めてのボローニャのブックフェアで受けた衝撃は、それはそれは大きなものだったようです。

以来、毎年ボローニャに通い、10年後からはブロンズ新社としてブースを構えるようにもなり、いつも世界中の児童書関係者から注目されています。ブースのデザインを毎年変えていることや、2017年にラガッツィ賞を受賞したヨシタケシンスケさんの写真など、活気あふれるブックフェアの様子をたくさんのスライドで紹介して頂きました。各国語版の絵本の表紙が並んだスライドも圧巻です。

また、若月さんは2020年のボローニャ国際絵本原画展の審査員も務めました。考え方や視点の異なるヨーロッパ出身の審査員たちとのディスカッションでは、彼らにアジアのイラストレーターの作品の見どころを伝えたり、絵本の絵に文化的背景が反映されることを実感したり、充実した審査の模様とともに、若月さんが気に入った作品もご紹介くださいました。

最後は平和と戦争の本のシリーズについてのお話となりました。2014年刊行の『へいわってすてきだね』と今年6月刊行の『戦争が町にやってくる』の2冊は、スタッフの方の読み聞かせとともに、制作秘話をお聞かせくださり、若月さんが強い信念をもってこのテーマに取り組んでいることが伝わってきました。ウクライナの絵本作家による『戦争が町にやってくる』は、2015年にラガッツイ賞を受賞しました。当時からこの作品が気になっていたという若月さんですが、2月からの軍事侵攻を機に日本語版を急遽刊行することになったそうです。戦時下の作家たちとのやりとりや写真も交えてお話くださいました。

若月さんのボローニャへの強い思いと、それぞれの絵本や作家を大切にしている様子が伝わってくる講演会でした。ありがとうございました。

 

講演会1

講演会2