2026年10月18日 オリヴィエ・タレック講演会
10月18日に、フランスの絵本作家、イラストレーターであるオリヴィエ・タレックさんの講演会「笑いながら、世界を見つめる ー フランスの絵本作家・イラストレーター オリヴィエ・タレックの仕事」を開催しました。タレック氏はこれまでに絵や作絵を担当した絵本を100冊以上手掛けており、日本でも16冊ほど翻訳書が出ています。今回タレックさんは、「フランス読書の秋2026」の一環で、在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本の招聘により来日されました。このようなアンスティチュ・フランセ日本との共催イベントはこれまでにも当館で開催しており、さまざまな絵本作家さんと出会う機会ともなっています。
本イベント前半の聞き手は当館館長の松岡が務め、タレックさんに質問をしながらお話を伺いました。
タレックさんは、元々大学ではグラフィックを学ばれており、卒業後も広告デザインをやりながら新聞などで風刺画のようなものを描いていたそうです。当時はイラストレーションを学べる場所も多くなかったといいます。イラストレーションや絵本の仕事をやり始めたのは、仕事をはじめてからしばらく経ってからで、あまり絵本について勉強しないまま始めてしまったといいます。最初はテキストをもらい、そこに絵をつける仕事を行っており、テキストを描くのは自分では無理だと思っていたそうです。しかし、その後どうしても自分がテキストまで手掛ける必要が出てきてしまい、作絵ともに自身が務めるものも手掛け始めたと言います。
作絵をてがけた『ひつじの王さま』(邦訳版:くもん出版刊)については、松岡からも政治的な要素も含まれた絵本であることの指摘がありました。王冠がやってきたことで、突如王さまになった羊のルイを主人公とするこのお話は、はっきりと書かれているわけではありませんが、誰かの上に立つ人への皮肉や風刺も感じられます。タレック氏は、この本では道徳的な概念を伝えようとはしておらず、また子どもたちがそれを得る必要はなく、絵本はディスカッションのための道具であるといいます。また、時事的な要素入れる面白さにも言及し、かつて風刺画を描いていたタレックさんの鋭いまなざしが感じられるようでもありました。
過去のインタビューで、テキストにないことをイメージに入れることが大切であると話していたということについての質問には、自身が作絵を手掛ける場合の制作の流れについて話してくれました。テキストとイラストはほぼ同時に制作し、その後イメージと被る内容があればテキストを削ったり、逆にテキストの内容をあえてイメージにはしないようにするなどの調整を行うそうです。
技法については、いまも鉛筆や絵の具を使い、ほとんどデジタル技法はつかわず、今でも紙に描いたものを出版社に渡しているといいます。また描き方は、鉛筆で下書きを描いたりラフを描いたりするのではなく、はじめから絵の具を用いて色をつけた状態で出版社に見せるとのことでした。それは鉛筆書きのラフをみせたあと、色を付けたときの印象の違いが出るのを避けるためとのことです。そのうえで、絵の具や色鉛筆などを塗り重ね、制作を行っています。今回、サインを描いているところも拝見しましたが、色鉛筆や絵の具を巧みに使っている姿が印象的でした。
日本についての印象などについても話を伺いました。今回は4回目の来日とのこととで、ご自身の子ども時代にはキャンディキャンディや戦隊ものなどのアニメも見ていたといいます。そのほか、民芸や染織などにも関心があるとのことでした。日本の作家では、五味太郎さんの作品には、同時代の作家はみんなびっくりさせられたと教えてくれました。
イベントの後半には来場者から質問を受けてのトークとなりました。たくさんの作品を制作しているタレックさんに、どのようにさまざまなアイデアを考えているのか、という質問には、日々テレビを見たりラジオを聴いたり歩いているときにアイデアがやってきて、それを書き留めていると答えられていました。こうしたやってきたアイデアが絵本として実際に動き出すには、数カ月はかかるとのことです。そのほかにも、「ユーモア」の考え方についてや、長年描いていることでの作品の変化について、表情の描き方についてなど、さまざまな視点から、時間いっぱいまで質問が寄せられました。
イベント後は、絵本をお持ちの方に向けたサイン会や交流会などが行われました。感想を伝えたり、自作の絵本を見せあったりと、さまざまなお話をする時間となったのではないでしょうか。
登壇くださったタレックさん、通訳の渡辺さん、参加してくださったみなさま、そして在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本のみなさまに感謝申し上げます。ありがとうございました。


