赤塚小学校(令和7年11月28日訪問)
教育長訪問記
11月28日(金曜日)赤塚小学校を訪問しました。研究奨励校の研究報告会に参加するためです。
赤塚小学校がめざす学校像は「みんなの笑顔があふれる学校」、「保護者・地域に信頼される学校」で、めざす教育は「あしたにむかって かしこく つよく かがやこう」です。これは頭文字が「あかつか」となっています。
当日は、板橋区教育委員会の令和6年度、7年度の研究奨励校の研究報告会でした。研究テーマは「主体的・協働的に探究する児童の育成 ~児童一人ひとりが自らの意思で課題解決の方法を選択できる授業づくりを通して~」です。当初(令和6年度)の副題は「地域とのつながりを活かした授業づくりを通して」でしたが、児童への意識調査から、児童の思いや思考に委ねて柔軟に単元計画を工夫することに課題があったことから変更したものです。ただし、地域とのつながりを活かしたカリキュラムの開発の成果があったとのことです。
最初は公開授業の見学で、吉川校長に案内されて、教室をまわりました。1、2年生は生活科、3年生から6年生は総合的な学習の時間で、どの学級でも探究的な学習の実践が行われていました。どの教室でも児童が主体的に学ぶ姿があり、児童が自分で選択して課題に取り組むことで、主体的に学ぶ姿勢を身に付けることができます。そのことで、児童に学びのオーナーシップを養うことにつながります。
上の2枚の写真のように、どの学級でも「授業の流れ」が板書されており、児童がどのような手順で学習していくのかが明確になっています。このことは児童が主体的に学ぶ上で重要です。探究的な学習や授業スタンダードSの実践では、児童がいつまでに何をどのように、どのような手順で行うことで学習が進むのかを自らが把握しておく必要があるからです。一つ一つ細かい指示をその都度先生が出すのではなく、児童が自分で考えて学習(行動)することで、自信をもって取り組む姿勢も醸成されます。
各学年の学習単元名が、1年生「たのしい あき いっぱい」、2年生「もっと なかよし 町たんけん」、3年生「みんなが くらしやすいまち」、4年生「防災意識高め隊!」、5年生「地域の農業を広めよう」、6年生「地域の誇りを受け継ごう」となっており、全て地域とのつながりを意識し、地域との連携により学習が進展していくようになっています。なかでも5年生が取り組んでいる農業は、この赤塚地域ならではと言えます。板橋区では都内にありながら、区が農業まつりを主催するなど農業に力を入れているからです。
授業では、一人一台端末に入力している児童、資料に目を通している児童、4人グループで話し合っている児童、発表の練習をしている児童など、さまざまな姿が見られました。生活科や総合的な学習の時間の授業形態が多様ということもありますし、私が着任して以来推奨している授業スタンダードSでは児童が同時に同じことをするのではなく、自分で(Self)選択(Select)して取り組むことが標準だからです。これにより現在の児童の多様な状況を包摂できると考えています。生き生きと学ぶ本校の児童は、そのお手本ではないかと思います。
本校の特長としては、児童がさまざまな思考ツールを活用できるよう、その解説資料を作成し、児童がいつでもそれを活用し、思考をめぐらせるような手立てを考えていることです。上の写真は児童がフィッシュボーン図により考えをまとめている児童の様子です。また、下の写真はマンダラチャート(マンダラート)で防災についての考え方を整理している掲示です。これは野球の大リーグで活躍している大谷翔平選手が高校時代に自分の目標を可視化するのに活用したことでも有名です。
このように、探究学習を進めるにあたって、児童が質の高い探究ができるよう、多様な方法をしっかり習熟させている点は素晴らしいと感じました。
参観授業の後、体育館で研究報告・協議会が開かれましたが、区内外から200名を超える先生方が参加されており、いかにこの研究テーマに関して興味・関心があるか、また先生方が取り組んでいる上で課題となっているかの証ではないかと思います。研究報告では本校の研究の成果として、地域とのつながりを活かした単元により、児童の学習に対する意欲が高まったことや、学習方法や学習形態を児童が自分たちで選択し学習を進めている姿が見られたことなどが挙げられました。
その後、約2年にわたって本校をご指導いただいた、白百合女子大学の中田正弘先生の講演がありました。とても示唆に富んだ内容でしたが、なかでも板橋区で令和7年度から本格的に取り組みが始まった授業スタンダードSを効果的に進めるための方策については、取り組んでいる全ての先生にとって意味のあるお話でした。中田先生に感謝申し上げます。
末尾に、約2年間、研究に取り組んでこられた赤塚小学校の先生方に感謝するとともに、本校の研究成果が区内の各学校に周知され、よりよい実践が横展開されることを期待しています。
(記・長沼豊教育長)
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