2024年1月6日 美術講座「予習!〈シュルレアリスムと日本〉展」

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ページ番号4001834  更新日 2024年1月8日

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1月6日には、3月から当館で開催する特別展「シュルレアリスムと日本」をより楽しんでいただけるように、“予習”の美術講座を開催しました。展覧会を担当する当館学芸員の弘中智子が講師を務めました。

「シュルレアリスムと日本」展は、フランスで発表された『シュルレアリスム宣言』から100年を記念して、板橋区立美術館、京都文化博物館、三重県立美術館の3館が協力して企画したものです。シュルレアリスムは20世紀最大の美術運動ともいわれますが、日本の画家たちも多いにその影響を受けました。本展では、シュルレアリスムの日本での紹介や展開を、戦前から戦後までの作品と資料で読み解きます。最初の会場となった京都文化博物館では12月に開幕し、当館は2番目の会場として3月2日に始まります。

さて、今回の講座は、展覧会にまつわる内容の講義を中心にしながら、簡単なワークショップを組み込んだものです。前半は、「シュルレアリスム」の定義から始まりました。その後、日本全国から超有名な作品や隠れた名品が集まる本展の出品作品の中から、いくつかの作品についてじっくり解説しました。画家自身の言葉や、美術評論家たちの文章も交えて、シュルレアリスム絵画を見るポイントや魅力が伝わったでしょうか。

前半の最後には、シュルレアリスム画家たちが考え出した「遊び」をみなさんに体験していただきました。3つ折りにした紙に3人で頭・胴体・脚を描くゲームなのですが、他の人の絵を見ないで描くというのがポイントです。3人が描き終わってから紙を開くと… 思ってもみない人物や生きものが現れます。実際にやってみると、シュルレアリストたちが重視した偶然性のおもしろさを味わえます。参加者のみなさんも、楽しんでくださったようです。

休憩をはさんで後半は、二つのトピックを取り上げました。まずは、シュルレアリスム絵画に影響を受けた画家たちが結成した小さなグループについて。中でもたくさんのグループを結成した帝国美術学校(現在の武蔵野美術大学)の学生たちの写真や資料からは、戦争が近づく時代の若い画家たちの青春の輝きが感じられるようでした。もうひとつのトピックは池袋モンパルナスの画家たちとシュルレアリスムです。館蔵品展(1月8日まで)の出品作品も取り上げながら、画家同士が切磋琢磨する様子などもご紹介しました。

美術講座風景1

美術講座風景2


最後には、寺田政明が靉光からもらったオブジェについてお話しました。そのオブジェとは、靉光が海岸で拾った地下足袋の裏なのですが、そこに美しさを見出した靉光は寺田にお土産として持ち帰り、寺田は自ら額装して飾っていたそうです。靉光はシュルレアリスムに影響を受けたとされる作品で知られますが、ありふれたものに美を見出し、絵画に結実させていった制作姿勢を垣間見ることのできるエピソードです。

地下足袋の裏



今回の講座は、「シュルレアリスムと日本」展をより深く楽しんでいただけるようにと企画しました。いかがでしたか。「シュルレアリスムと日本」展の当館での開催は3月2日から4月14日までです。ぜひ見にいらしてください。