2024年8月24日 シュルレアリスムとアブストラクト・アート ギャラリートーク
本日、「館蔵品展 もっと魅せます!板橋の前衛絵画 シュルレアリスムとアブストラクト・アート」のギャラリートークを行いました。
今回は前半編ということで1920年代~40年代の作品を中心に見どころを紹介しました。
まず最初に今回のメインビジュアルに使用した小牧源太郎《ラディオラリア》についてお話をしました。
この作品は一見すると地平線が強調されておりシュルレアリスム風ですが、よく見ると放射状に等間隔で描かれた線や円錐型のオブジェなどアブストラクト・アートの影響を感じられる部分も見られます。
シュルレアリスムとアブストラクト・アートは1930年代から40年代にかけて日本に紹介されますが、その前の1920年代、大正時代にもダダイスムや未来派などの海外の動向に影響を受けた作品が生まれました。展示室では河辺昌久や中原實といった画家たちの作品を紹介しています。
シュルレアリスムに影響を受けた作品のひとつ、寺田政明《夜(眠れる丘)》を紹介しました。
この作品は1940年の第1回美術文化協会出品作です。展覧会開催前には特高警察から「《夜》とはどういう意味か、色調が暗いのはなぜだ、反戦じゃないのか」との質問を浴びせられたようです。
この発表の翌年には、福沢一郎と美術評論家の瀧口修造が検挙され、約半年拘束されました。
同時代のアブストラクト・アートの作品では、帝国美術学校に学んだ永井東三郎《作品》や《作品B》が挙げられます。
最後に時代の陰鬱さを匂わせるような伊藤久三郎《Toleration》と、直接的な批判を表現した難波香久三《地方行政官A氏の像》についてお話をしました。
どちらも同じ1938年の作品で、様々なモチーフを組み合わせた様子からはシュルレアリスムのコラージュの影響がうかがえます。
本日は多くのお客様にご参加いただきました。
次は9月14日(土曜日)にギャラリートークを開催する予定でしたが、作品とお客様の安全のため、1階講義室にてスライドトークに変更となります。
聴講無料、時間は14時00分~14時30分、1階講義室に直接お集まりください。
(参加者36名)