2024年8月6日 ティーンズ絵本のアトリエ
8月6日、中高生を対象とした絵本づくり講座「ティーンズ絵本のアトリエ」を開催しました。なかむらしんいちろうさんが講師を務めてくださいます。なかむらさんは絵本作家であるとともに、保育の専門学校や美大で絵本制作について教鞭を取られています。講座は午前10時から午後4時までの1日で開催されました。
この講座は、8月2日から4日の期間に行っていたハリエット・ヴァン・レークさんのワークショップと同じ部屋で実施しています。なかむらさんもこのワークショップに参加されており、3日間で制作された作品が壁に覆われていました。なかむらさんはまず壁の作品について説明をしたあと、参加者のみなさんにも「もしあなたが野菜か果物なら一体なに?」「あなたのお父さんかお母さんが乗り物だったら、どんな乗り物?」のどちらかをテーマに、作品を制作するように伝えます。色画用紙などを使い、トマトやブルーベリー、クレーン車や自転車などができあがりました。この作品を半分に折った画用紙に貼り、タイトルを書き入れることで、即席の絵本が出来上がります。ここでなかむらさんは主人公をつくることで、タイトルやストーリーが生まれてくることを伝えてくれました。
ここでなかむらさんは、ご自身が作った絵本「ラピちゃんのあまやどり」を見せながら、絵本がどのように制作されるのかをお話してくれました。原画やラフスケッチ、ストーリーボードに日々のスケッチなど、たくさんの資料前にすると、たくさんの時間をかけて絵本がつくられていることがわかります。それぞれの資料について、なかむらさんは丁寧に説明してくださいました。今日は、こうした絵本づくりの作業をなんと1日で体験していきます。
次に、絵本の主人公となるキャラクターをつくります。10分ほどスケッチをしながらアイディア出しをしたあと、なかむらさんはキャラクターの正面、横面、後ろ姿を描く三面図について、そしてキャラクターの家族構成や好きなものを詳細に書いていく履歴書について説明してくださいました。これらはキャラクターを様々な角度から立体的に描くための大事な工程であり、さまざまな場面を描く際に役立ちます。
お昼休みを挟んで、自分の好きな絵本について掘り下げる作業を行いました。今回参加者のみなさんには、事前にお願いして、それぞれ好きな絵本を持ってきてもらいました。好きな絵本には、自分にとって「こういうものをつくりたいな」というものが詰まっていると、なかむらさんは話します。今回は、この好きな絵本を元にして、新しいお話をつくっていきます。そのために、「好きなものマップ」をつくり、好きな絵本、そして自分自身を分析する作業を行います。自分がどういうものが好きなのか、そして持ってきた絵本のどういうところが好きなのかを細かく書き出していきます。
そして持ってきた絵本からそれぞれ一冊を選び、その構造を調べる作業を行っていきます。絵本のあらすじを抜き出していくことで、お話の骨格を理解するというものです。骨格を理解したら、その物語のなかで好きなところを抜き出し、アレンジして自分の方に引き寄せていくことで、そこから自分なりの物語をつくることができます。0から物語をつくりだすのは大変な作業ですが、なかむらさんは、好きなものをベースにすることで、自分なりの物語をつくりだす方法を教えてくれました。
次は、ここでつくった物語をストーリーボードに落とし込んでいきます。A3用紙を細かく折って枠をつくり、そこに絵本の展開を描きこんでいきます。参加者のみなさんは苦心しながらも、少しずつ自分なりの物語を考え、描き入れていきました。
最後に、ハードカバーの本の製本を行いました。なかむらさんが用意してくださった画用紙や厚紙を使い、30分ほどで横長の本を完成させることができました。それぞれが自分だけの一冊です。最後に、参加者のみなさんが考えた物語についてそれぞれ紹介します。一日で考えたとは思えないほど、素敵なお話ばかりです。
今回の講座では、一日を通し絵本のつくりかたを教えていただきました。みなさんが考えたお話について、すぐでなくても、ぜひどこかで完成させてほしいと、なかむらさんはお話くださいました。
一日がかりの長い講座でしたが、参加者のみなさんは、とても意欲的に取り組んでくださいました。ぜひ今回の講座をきっかけに、絵本作りに取り組んでくださると嬉しいです。なかむらさん、そして参加者のみなさん、ありがとうございました。