2024年7月11日 夏のアトリエ3日目
グスティさんの夏のアトリエ、3日目となりました。この日も7方向にむかって感謝をしながらあいさつをしてスタートしました。グスティさんは初日から部屋の中ではサンダルを脱いで裸足で歩いていますが、参加者たちのなかにも裸足になったり靴を脱いで制作している人もいて、どんどんくつろいだ様子になっています。
連日ちがう課題が出ていますが、この日の午前中は前日午後からの作業の続きです。自分の大切な思い出の写真から発想して、物語をつくるというもの。グスティさんに相談をしながら進めたり、同じテーブルの仲間どうしで話をしながら作業をしたり、あるいは黙々と作業をしたり、それぞれのペースで制作が進みました。自分自身や自分の思い出に向き合いながら制作をしていると、グスティさんも前日に言っていたように、思いがこみ上げてくることもあったようです。
ときにはグスティさんがギターを弾きながら歌を歌い、それに合わせて大合唱となり、さらにはみんな立ち上がって踊りだして大盛り上がりになることも。でも、いつの間にか制作に戻り、グスティさんは静かな曲を弾いたりしていました。
みなさんの制作中には、グスティさんは参加者のポートフォリオを見る時間も取ってくれました。講師と一対一で、自分がいま取り組んでいる作品を見てもらったり、仕事についての悩みを打ち明けたりするのも夏のアトリエ恒例の光景ですが、参加者たちが本当にやりたいことを丁寧に聞き取り、励ましてくれるグスティさんとのやりとりもまた、参加者たちにとって癒しとなっているのではないでしょうか。
ランチタイムもグスティさんを囲んで、みんなで和気あいあいと食べておしゃべりして、楽しそうです。写真から物語をつくる課題は、お昼休憩の後も少し制作時間をとって、その後、何人かに発表してもらいました。家族の写真、飼っていた動物との写真、小学校の入学式の写真、楽しい旅行の写真などから、生み出された物語は、コラージュやコマ割り、フラップなどを使って、それぞれの形で表現されていました。どれも現実のお話とはちがうけれど、大事な思い出や自分の奥深くに隠れていた感情とつながっていて、説明しながらいつの間にか涙がこぼれてくる場面もありました。聞いている参加者たちも活発にコメントを添えていて、自分と重ね合わせたりしていたのかもしれません。グスティさんは多くは語らず、参加者たちの様子を見守ってくれました。
午後の後半は、うってかわってグループでの作業となりました。机をずらし、床に大きなスペースを作って、ロール紙を部屋の幅いっぱいに広げました。そこにさまざまな画材を置き、参加者たちがその周りをかこみました。そしてグスティさんの指示のもと、点を打ったり、線を引いたり、文字を書いたり、波を描いたり。カタツムリの呼吸になったり、F1のようなスピード感を表したり。利き手と反対の手や口や足で描いたり、目をつぶって描いたり。描き方を変えるたびに場所を移動するよう指示されるので、文字通り目の回るような忙しさです。最後には全員で1本のペンを持って描きました。みんなが描いた紙を見ながらグスティさんは、この課題を通して、どんなにゆっくりでも、手を使わなくても、見なくても、絵は描けることが分かるだろうと言い、白い紙をハサミで切り抜いて、大きな紙の上に置いてみると、とっても素敵なイラストになると教えてくれて、みんなで試してみました。
自分自身や記憶にじっくりと向き合って制作した後に、体を動かして何も考えずにみんなで一緒に描いてみるという体験は、心地よい疲れをもたらし、参加者たちのなかにインクルージョンという今回のアトリエのテーマが自然にしみこんでいくようでした。みんなで一緒に片付けをした後は、グスティさんのギターに合わせて歌って踊って、3日目が終了となりました。