2024年7月10日 夏のアトリエ2日目
夏のアトリエは2日目。この日もまずは7つの方向へのへのあいさつから。みんなで輪になって感謝を表します。こうして、インクルージョン、そしてアイデンティティをテーマにした、グスティさんの夏のアトリエ2日目が始まりました。
この日の朝は、前日に参加者全員の顔と手と足の写真を撮影してA3の用紙にモノクロ印刷しておいたものを使って課題を行いました。これは、グスティさんが自閉症のある人があつまるアソシエーションで試みたワークショップが元になっているそうで、とてもいい結果を得たそうです。顔の上に別のものを描いたり貼ったりしていくと顔は隠れてしまうかもしれませんが、隠すことで何かが明らかになっていくこともあるとグスティさんは言います。3枚の紙を渡されたみなさんは、どんな技法でもいいし、制限はないというグスティさんの言葉に背中を押されたのか、戸惑うことなく、どんどん写真の上に描いたり貼ったり、あるいは切ったりしていきました。
ときどきグスティさんは、参加者が持ってきてくれたギターを奏でながら歌ってくれました。ときには、みんなにも歌詞を教えてくれて大合唱になったり、小さな声でひっそりと歌ったり。グスティさんが歌っていないときは、スピーカーからいつも音楽が流れていてます。
顔・手・足の写真を使った作品が出来上がった人から壁に貼っていきました。次の課題としては、お互いにポートレートを描き合うというもの。全員が立ち上がって動き回りながら、他の参加者やグスティさんや通訳の森泉さん、スタッフたちの顔を描いていきました。これらも、同じ壁に貼っていきます。こうして、自分で自分を見て作った作品と、他人が自分を見て描いた絵が、壁いっぱいに貼られました。何人かの参加者に、自分の描いたものについてコメントしてもらいました。短時間での制作でしたが、それぞれの作品にはしっかり意図があり、自分自身を見つめながら生まれてきたことが分かります。
午後からの課題は、大切な思い出の写真をもとにして物語を作ること。前日の課題で使った宝物とともに、今回のアトリエの持ち物として、みなさんが家から持ってきてくれたものです。グスティさんは、1枚の写真の前後の物語は、自分で作り出すことができると言います。グスティさんは、さまざまな例を挙げて、グラフィックノベルのようなスタイルを使うことを提案し、みんなが物語を作り出せるように励ましてくれました。参加者のみなさんが机の上に古い写真を取り出すと、さまざまな物語が立ち上がってくるようですが、自分自身の思い出と向き合うこの課題は、簡単ではないそうです。グスティさんによるとこの課題は「水」に関係するものだそうで、作業を始める前にみんなで輪になって水に感謝をして、一緒に水を飲みました。それから参加者たちはそれぞれの制作に集中していきました。3日目の午前中までこの課題の制作が続く予定です。
このアトリエの通訳を務めてくれているのは、ボローニャ展コーディネーターの森泉文美さんです。当館の講演会やワークショップの通訳をいつもお引き受けくださっています。何か国語も操ることのできるグスティさんは、英語とイタリア語(スペイン語もちょっと)を織り交ぜながらお話され、森泉さんはほぼ同時通訳のようにして日本語にしてくださり、参加者の発言もグスティさんに伝えてくれます。夏のアトリエでは、講師と参加者をつないでくれる通訳の方の存在がとても大事であり、とってもハードな仕事ですが、森泉さんはいつも優しくみんなに寄り添ってくれます。