2024年6月1日 講演会「歸空庵コレクションによる 洋風画という突風」

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ページ番号4001884  更新日 2024年6月5日

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6月1日(土曜日)、当館学芸員植松有希による「歸空庵コレクションによる 洋風画という突風」と題した講演会を開催いたしました。
「洋風画という風」展で展示されている作品3点を取り上げ、洋風画についての基礎から、新たに寄託された作品について考えられることまでお話しました。

まずは、今回チラシポスターでメインビジュアルとした安田田騏「象のいる異国風景図」を通して、洋風画の特徴についてお伝えしました。
弧を描きながら遠くを小さく描き、画面手前に人物や樹木を大きく配する遠近法や、建物などに付された陰影法、微妙な空模様を表現した背景など、画法はまさに西洋風です。一方、丸みを帯びたゾウのお尻は、仏教絵画などで伝統的に描き継がれてきた白い色で着色されています。
このように、一つの画面上で洋の東西が混ざり合うそのさじ加減が、洋風画の魅力の一つとなっています。

講演会uematsu

春木南溟による、西洋の銅版画を模した作品については、元絵となった作品を何点か突き止めたので、それらと比較しながらご紹介しました。
このうちの1点は、1742年にフランクフルトで行われた神聖ローマ皇帝の戴冠式のイルミネーションの様子ですが、実際の西洋の銅版画は裏から光源を当てると鮮やかに灯がともるような仕組みになっていることがわかりました。

イルミネーション

最後は新たにご寄託頂いた作者不詳「ブロンホフ家族図」についてです。これは、1817年(文化14)にオランダ商館長として任命されたヤン・コック・ブロンホフの家族を描いた作品です。この作品には、一連の家族図作品にほぼ見られない西洋人女性が描かれています。この人物について、他の作例やヘンドリック・ドゥーフによる商館長日記の記述と照らし合わせながら推測していきました。まだ結論は出ませんが、今後の研究課題となる重要な作品だとわかりました。

成澤先生講演会 一角

講演会では、このように表現の異なる3点の作品を通して、展示中の作品を数多くご紹介しました。キリスト教とともに初めて日本人が接した洋風画法は、禁教とともに吹き飛んでしまうような微風でしたが、江戸時代には蘭学の高まりとともにその影響力が高まり、日本絵画に突風のような刺激も与えました。
海外との交流が制限される時代にあっても、オランダ船が季節風にのって日本に来航したように、本展から、わずかに開かれた窓から入ってきた洋風画という風を感じて頂けたのであれば幸いです。