2024年8月11日 2024ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア総復習
8月11日(日曜日)に、今年のボローニャ展の最後のイベントである「2024ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア総復習」を開催しました。絵本評論家の広松由希子さんと、当館館長の松岡希代子による対談です。ボローニャのブックフェアに長年参加している二人の視点から、今年のブックフェアについて振り返る名物イベントとなります。冒頭でも話されていましたが、二人でブックフェアにかかわる仕事をされてから、なんと20年以上になるとのこと!
「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア(BCBF)」とは、世界でも最大の児童書専門のブックフェア(見本市)です。今年のブックフェアは4月8日から11日まで開催されました。イタリア・ボローニャ国際絵本原画展は、このブックフェアが主催するイベントのうちのひとつです。
はじめに、今年のボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアについて紹介しました。新型コロナ・ウイルスなどの影響もあり、2020年、2021年はブックフェアも中止となりましたが、今年は「パンデミック前を超えた」と言われるほど、多くの人が参加されていました。現地で撮影した写真をスライドで見せながら、ブックフェア会場やイベントの様子などを振り返ります。
ブックフェアはわずか4日間の開催ではありますが、毎日同時多発的にイベントが開催され、多くの出版関係者やイラストレーターたちが訪れます。広松さんと松岡自身が登壇するイベントも多数あり、今回はそうしたイベントを中心に紹介しました。また、当館でも個展を開催するなど深い関わりがあり、ブックフェアにも出版社ワンストロークとして参加されていたデザイナーの駒形克己さんが今年亡くなられたことを受け、急遽実施された追悼イベントについても話しました。
今年の新しいトピックのひとつが、国際交流基金とJBBY(日本児童図書評議会)のブースです。二人も関わったこのブースは今年初出展であり、日本の絵本を紹介することを目的としています。日本の絵本について紹介するブースは二人としても念願とのこと。ブースでは紙芝居やポートフォリオレビュー、日本食を用意してのレセプションなどのイベントを実施するほか、絵本を紹介したタブロイド誌を制作、配布しました。広松さんは今回のブックフェアで日本の絵本についての講演を行いましたが、このブースで紹介された絵本に沿った内容だったこともあり、講演内容にも少しふれてくださいました。
また、日本で「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」として開催している、イラストレーター展(Illustrator Exhibition)も取り上げます。今年は32の国と地域から78名の入選者が出ましたが、中国が9人と一番多いものの、入選国は集中することなくばらけていると言います。また近年、HP上では入選者だけでなくファイナリストも公開しており、ブックフェア全体の傾向としても、なるべく多くの作品を紹介しようとする気概が見られるとのことでした。それは、ラガッツィ賞には選ばれなかった本を紹介する The BRAW アメイジング・ブックシェルフにも表れていると言います。
後半では、今年のラガッツィ賞の絵本を広松さんが紹介してくださいました。この賞は、出版された児童書に与えられるもので、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアが主催する賞の中でも長い歴史を誇り、最も重要な賞といえます。いくつかの部門ごとに優秀賞(Winner)とスペシャルメンションを選出するもので、受賞作は世界の児童書業界から注目を集めることになります。
広松さんは、各部門(フィクション部門、ノンフィクション部門、エクストラ・オーディナリー部門、トドラー(赤ちゃん絵本)部門、オペラプリマ部門、ニューホライズン部門、2024特別部門・海、コミックス部門)で受賞された絵本について、いくつかは実際に見せ、コメントをしながら紹介してくださいます。今年は昨年より賞が増え、また審査団もフィクション系、ノンフィクション系で分かれたとのことで、その個性が出る結果になった広松さんは言います。また、受賞作品の出版国についても触れ、それぞれの特徴などについても言及されました。
最後に、松岡より過去のボローニャ展について当時の写真とともに紹介がありました。1981年、板橋区立美術館ではじめてのボローニャ展が開催されます。その後、松岡は1989年にボローニャのブックフェアに初参加し、以降長年にわたり参加しています。広松さんと松岡は、日本でボローニャ展を紹介するだけでなく発信していきたいという思いから、1994年には「Dancin’ Colours-90年代日本の絵本原画展」をボローニャで開催しており、一参加者としてだけでなく、さまざまなかたちでこのブックフェアに関わっています。
広松さんは、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアは色々な窓が開く場所であると語ります。毎年参加することで、定点観測するようなかたちで、さまざまな変化が読み取れるそうです。また、絵本という窓を通じて、その国の状況などの感じられることがあるとお話してくださいました。また、松岡もボローニャ展を契機として、いま板橋区では「絵本のまち板橋」として絵本をキーワードとして町を盛り上げていこうという活動も行っていることにふれながら、ブックフェアに参加しさまざまな国の人と関わりをもつことで、日本にいるとわからないことが見えてくると語りました。
来年のボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアは3月31日から4月3日に開催されます。ボローニャ展への応募は既にはじまっており、10月12日が応募締め切りです。ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアのHPでは、さまざまな情報がご覧いただけますので、ぜひご覧ください!