2024年7月13日 夏のアトリエ5日目
夏のアトリエ最終日となりました。この日は1日で1冊の絵本を作るという最後の課題に挑みます。到着するなりグスティさんは、みんなに絵本作りを始めるように促しました。そしてこの日は自分はみんなに対していじわるな敵(!?)になると宣言しました。それをみんなが受け入れてくれたことを確認して、まずは7方向へのごあいさつから始めました。
敵になると言ったグスティさんですが、物語や絵本作りのためのアドバイスもたくさんお話くださいました。夢はとても重要であること、自分の作品におごってはいけないこと、いつもフレキシビリティを保つこと、そのほかにも自身のさまざまな体験や思いも披露しながら話し続け、参加者にもストーリーを聞いて回ったり、意見をたずねたりして、部屋の中が静まり返ることはありません。
ときには、時間がないぞ!絵本を作るぞ!絶対にできる!とみんなにはっぱをかけたり、子どものように床に寝っ転がって描け!と指示を出したり、焦るみんなを後目に、じゃあ歌おうかなと言って、ギターを弾きながら部屋中を歩いて歌ったりするグスティさんでした。
12時30分にはしっかりお昼休憩をよびかけ、この日も参加者たちと一緒に楽しくランチをとり、美術館中がグスティさんのアトリエの雰囲気で満ちています。
ランチの後も制作は続きましたが、みんなが椅子にじっと座って制作しているのを見ると、踊りながら制作して!とアップテンポの音楽を流し出します。ひとしきり踊ったあと、急いで急いで!とまた制作を促すグスティさん。参加者の方は翻弄されながらも、必死に制作を続けます。
3時30分になると、制作した絵本の発表がはじまりました。一人ひとりがみんなの前に立ち、自分の作った絵本を読み聞かせます。発表後には、講師や仲間たちから感想が伝えられました。
グスティさんは制作前、このメンバーであれば絶対に全員が完成させることができる、と確信をもって伝えていました。実際、わずか3時間で12見開きの絵本を制作するという大変な課題でしたが、参加者全員が絵本を完成させることができました。
これまで、参加者は皆、自分のトーテムアニマルやこどもの頃の宝物や大切な写真など、自分自身のアイデンティティに関わるさまざまなものと向き合ってきました。また、グスティさんから語られるお話や症候群についての制作から、多様な特性や価値観をもつ他者との関わり方について、考えるきっかけとなったかもしれません。
制作された絵本には、自身の思い出や大切にしたいことが反映されていたり、他者との違いを意識しながらも互いに認め合っていくようなものも多くみられました。今回のワークショップの中でテーマとなっていたインクルーシブやアイデンティティに、参加者それぞれが真っすぐ向き合ったからこそ生まれたものだったと思います。
この絵本の制作は自身の心の奥と向き合うとても難しい作業だったかもしれませんが、だからこそ5日間のワークショップでそれぞれが学んだことや気づけたことを、お互いに感じられる作品となっていたのではないでしょうか。
グスティさんは、これまでさまざまな場所でワークショップを行っています。しかしながら、美術館のような場所で行うこともたくさんのイラストレーターと行うこともなく、ワークショップがはじまる前はとても緊張していたとのことです。しかしながら、何を言ってもついてきてくれる参加者の姿をみて、最終的にはとても安心してワークショップを進めることができたとのことでした。そして、グスティさんに導かれながら、自分自身と向き合うこのワークショップは、参加者の皆さんの心を癒すようなものとなっていたように思います。
今回、イタリア語と英語(と少しのスペイン語)を駆使してのワークショップでしたが、通訳をしてくださった森泉文美さんは、グスティさんの意図を深く理解し、受け止めながら通訳をしてくださいました。
グスティさん、森泉さん、そして19名の参加者の皆さんのおかげで、素晴らしい夏のアトリエになりました。ありがとうございました!この夏のアトリエが、皆さんの次の活動につながるものとなることを願っています。