2024年11月24日 アンドレ・レトリアさん こどもアトリエ
11月24日(日曜日)には、ポルトガルのイラストレーター、アンドレ・レトリアさんをお招きし て、子どもアトリエを開催しました。 14歳のころから新聞や雑誌のイラストを描きはじめたアンドレさんは、さまざまな絵本も手掛けています。2003年、2016年、2019年にボローニャ国際絵本原画展に入選し、2014年にはボローニャ・ラガッツィ賞も受賞したほか、数々の国際的な賞を受けています。さらに2010年には出版社パトロジコを設立して編集者としても活躍しています。今回は、2024年4月に絵本『戦争は、』(岩波書店)が 翻訳されて日本で出版されたことを記念し、ポルトガル大使館の招聘で初めて日本にお越しになりました。アンドレさんはポルトガルでも子どもたちに向けてワークショップをされているそうで、初来日にあわせてこどもアトリエを企画しました。通訳は、ポルトガル大使館翻訳官の日置圭一さんと、ポルトガル語翻訳者の木下眞穂さんです。
こどもアトリエの冒頭、アンドレさんは自身がイラストを手掛けた絵本『Eu vou ser(わたしはこうなる)』を取り出しました。これは、ページが3分割されていて頭、顔、体を入れ替えることができるしかけ絵本です。人間や動物だけでなく、頭の部分が食べ物になったり、顔の部分が雲になったりもするので、アンドレさんは「これはゲームだ よ」と言いながら、子どもたちと一緒にめくりながら、さまざまな組み合わせになるのを楽しみました。 そして、みんなもこんな絵本を作ろうと言い、まずはアンドレさんご自身が絵を描いてくれました。クレヨンやコラージュで、子どもたちとやりとりしながらお話を語るように描いていく様子に、子どもも大人も釘付けとなりました。出来上がったちょっとヘンテコな生きものには、子どもたちが名前をつけてくれました。
ここからは子どもたちの制作です。点線で3分割された紙を3枚ずつ配布し、それぞれに絵を描きました。顔の部分は人間や動物なのに、頭には不思議な帽子をかぶっていたり、自分の好きなものがのっかっていたりします。なかには、顔の部分が果物だったり、ピザだったり。さらには、顔も体もないものもありました。繊細に描いたものから、カラフルで力強いものまで、表現の仕方も子どもによってまったく異なります。クレヨンや色鉛筆で描くだけでなく、端切れの紙が詰まった箱からさまざまな素材を見つけてコラージュ技法を使う子もいました。子どもたちがどんどん制作を進め、保護者のみなさんも積極的に参加していく様子に、アンドレさんもとてもうれしそうで、各テーブルを回って声を掛けていました。
みんなが絵を描きあげたところで、製本作業に取りかかりました。まずは3枚(ある いはもっとたくさん)の紙をまとめて3ヶ所ホチキス留めします。それらを、脇の2cm程度を残して点線に沿ってスタッフがカッターで切り、表紙と裏表紙の2枚の紙で挟んで再びホチキス留めします。最後に表紙にタイトルや絵を描いて出来上がり。自分の描いた絵だけで絵本にしたものや、きょうだいの合作、なかには家族全員の絵をまとめて一冊にした分厚いものも。アンドレさんの提案で、絵の対向ページに言葉や文章を書いた子もいました。
完成した絵本をめくると、偶然の組み合わせが 次々に現れ、いつまでも楽しむことができます。自分で作ったものなのに、めくるたびに新しい驚きにあふれる絵本になりました。最後は発表会。他の参加者たちの絵本を見るのも楽しいひとときとなりました。最後にアンドレさんは、みんなからたくさんのインスピレーションをもらったと述べ、子どもたちは自由に想像することでこれからどんなものにでもなれるということを忘れないでくださいと、みんなにメッセージを伝えてくれました。
アンドレ さんと参加者のみなさんのおかげで素敵なこどもアトリエとなりました。通訳してくださった日置さんと木下さん、そしてポルトガル大使館と岩波書店の皆さん、ご協力ありがとうございました。
アンドレさんは2日前の金曜日に東京に到着し、11月23日(土曜日)に板橋区立中央図書館で開催された絵本『戦争は、』についての講演会にも編集者と翻訳者とともに登壇されました。それでも疲れた様子をまったく見せることなく、こどもアトリエを楽しみ、休憩時間には当館で開催中のレオ・レオーニと仲間たち展も鑑賞しました。レオーニの絵本やデザインは知っていたけれど、絵画などのアートワークはここでの発見だと言い、熱心にご覧になっていました。