2024年8月4日 ハリエットのアトリエ3日目

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ページ番号4001904  更新日 2024年8月8日

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ハリエットのアトリエ、ついに最終日です!今日は3日間の集大成として、絵本を一冊完成させます。

絵本の制作に入る前に、1日目から続けている壁をつかったエクササイズを行いました。ハリエットさんは「この壁全体はひとつの絵本であると思ってください。絵本だとしたら、何が足りないと思いますか」と参加者に問いかけます。
壁にはこの二日間で制作されたたくさんの作品が貼られていますが、テキストはついていません。ハリエットさんは、セリフなどのテキストを作品のそばに貼り、作品と作品を紐でつないで物語をつくるように伝えます。自分がつくった作品だけでなく、他の人がつくった作品も巻き込んで、壁一面に物語が展開していきます。
何人かの人には前に出てもらい、自分のつくったテキストを発表してもらいました。その次は複数人で、目に入るテキストを読みあいます。誰かが口にしたテキストに対応しそうなものを壁から探し出し……という流れを続けていくと、テキストを書いたときにも思いもよらなかった物語が見えてきます。ハリエットさんの言う通り、参加者全員の力によって、壁全体が大きなひとつの絵本になったようでした。

テキストを壁に貼る参加者

壁


エクササイズの後は昼食まで、昨日から続く絵本づくりの続きです。ハリエットさんは、結果よりも経験やプロセスが大事であり、作っていることを楽しんでいる時点で良い作品であるのだから、結果を考えずに楽しんで制作するようにと伝えます。
今回、通常の絵本づくりであれば行う下書きやスケッチせずの制作ということで、普段とは異なる作業工程に悩みながらも、参加者の方はみんな一生懸命制作を続けます。

昼食後、最後にもうひとつ小さなエクササイズを行いました。
初日から使っている冊子の表紙と裏表紙にあたる部分を広げて、そこに絵を描いていきます。描くのは、「もしあなたが野菜か果物なら一体なに?」「あなたのお父さんかお母さんが乗り物だったら、どんな乗り物?」「自分の一番愛する人が動物だったら、どんな動物?」「全然好きじゃない人がなにか物体だったら」……というお題のもと、この3日間で制作してきたものです。それらを、目をつぶって描くようにとハリエットさんは言います。みんな目をつぶり、頭のなかでイメージをしながら、手を動かしていきます。この時話していた、見ていなくてもディティールを丁寧に描くように、というのも、初日から繰り返し彼女が伝えてきたことです。描き終わったら目を開け、表紙にタイトル、作者名、出版社名を書き入れます。
ハリエットさんは完成した表紙を見て、いくつかのものを全員に紹介してくれました。そして、みんな見ないで描いたけれど、どの表紙も生き生きしている!と話し、こうした取り組みによって普段なら思ってもみないような余白が生まれること、そこに新しく想像する余白があると話してくださいました。

アドバイスをするハリエットさん

ワーク中

ハリエットさんと齋藤さん


このエクササイズの後は、再び制作作業に入ります。発表までは残り2時間ほど。その間、ハリエットさんは参加者の間をまわってアドバイスをしたり、希望者にサインをしてくださいました。

制作時間が終わり、ついに発表の時間です。ひとりひとり作った絵本を手に、みんなの前で説明します。この絵本は、1日目に書いた自分の書いた悲しい話と、誰かからもらったハッピーな話を組み合わせてつくったひとつの物語をもとに制作されました。出来上がったものは1メートル大の大きな絵本から手のひらサイズの小さな絵本までさまざまで、立体的な絵本やしかけがあるものもあり、新しく生まれた物語をどのように表現するか、皆さんの工夫が随所に見て取られました。
ハリエットさんもおっしゃっていましたが、まったく異なるふたつのお話を組み合わせるのはとても難しく、また自分にとって悲しいお話をテーマとするのも大変な作業だと思います。難しい課題であり、かつ限られた時間のなかではありましたが、ひとりひとり真摯に物語と向きあって作業され、参加者全員が無事制作・発表することができました。ハリエットさんはすべての発表を真剣に聞き、コメントをしてくださいました。また、絵本ならではの翻訳が難しい言葉も多いなかで、齋藤名穂さんは作品の意図をくみ取りながら、素晴らしい通訳をしてくださいました。

全員分の発表を終えたあと、いつもと違うことに挑戦した皆さんにハリエットさんは賛美と感謝の言葉を伝えたうえで、参加者の皆さんがこのワークショップを経て何かを持って帰ってくれると嬉しい、と締めくくってくれました。
この3日間、ハリエットさんは考えすぎずに遊び心をもって取り組むこと、結果にこだわらず、作り出すこと自体を楽しむことを繰り返し伝えてくれました。また、目をつぶって描いたり、他者からもらった物語を元に考えたりと、自分が思ったものとは違うものが生まれていく過程を経て、思ってもみなかったところから生まれるイマジネーションとその豊かさについても気づかされる機会となったように思います。

ハリエットさん、齋藤さん、そして19名の参加者の皆さんによって、素晴らしいワークショップになりました。ありがとうございました!参加者の皆さんが、今後も遊び心をもち、楽しみながら制作されることを心より願っています。

ハリエットさん

発表の様子