2024年8月2日 ハリエットのアトリエ1日目

このページの情報をXでポストできます
このページの情報をフェイスブックでシェアできます
このページの情報をラインでシェアできます

ページ番号4001902  更新日 2024年8月4日

印刷大きな文字で印刷

8月2日より、「ハリエットのアトリエ 絵本への旅」が始まりました!オランダの絵本作家ハリエット・ヴァン・レークさんを講師に迎えて行われる、3日間のイラストレーター向けワークショップです。
オランダを活動拠点とされているハリエットさんは、これまで『レナレナ』や『ボッケ』、『エーディトとエゴン・シーレ』、『ミーのどうぶつBOOK』(いずれも、訳・野坂悦子、朔北社刊)といったユニークな絵本を手がけてきました。2019年にはボローニャ展の審査員をつとめ、同年には当館で1日講座やこども向けワークショップの講師もつとめていただいています。
今回のワークショップでは、ハリエットさんの自由な発想に惹かれ刺激を受けたいと、東京近郊だけでなく日本各地から19名の参加者が集まりました。ワークショップは英語で行われ、デザイナーであり建築家の齋藤名穂さんが通訳をつとめてくださいます。


ワークショップはまず、さまざまなお題にあわせて絵を描くエクササイズからはじまりました。
A3サイズの紙を半分に折って簡単な冊子をつくり、最初は音楽に合わせて踊りながら、周りにいる人たちの絵を描いていきます。曲が終わると、次はそれぞれ自由に「大変なポーズ」をとるように言われます。机や床に寝転がったり、体をぎゅっと曲げたりねじったり。その大変なポーズをとっている自分の姿を想像して、絵を描いていきます。ハリエットさんの「考えすぎないで!」という言葉に引っ張られるように、参加者の皆さんも少しずつ大胆で自由なポーズになっていきます。
これを終えると次は、複数人のグループでの「大変なポーズ」です。参加者の方は器用に、まるでオブジェのように重なり合いながら、自分たちの様子を描いていました。

この大変なポーズで描いたふたつの絵に、今度は文章をつけていきます。ひとりの方には「今朝起きて行ったこと」、グループの方には「誰かに会ったときに行ったこと」を3センテンス以上で書くというもので、絵の内容と文章はもちろん関係ありません。ハリエットさんは参加者の作品をみながら「最初にこの文章を描いたらこの絵はでてこない」と、絵とテキストの組み合わせについて指摘し、テキストとの思いがけない組み合わせによって絵がもっと生き生きしたものになってくること、そして考え過ぎず自由に絵を描くことで、遊び心のあるレイアウトになると伝えてくれました。


ハリエットさんと斎藤さん

さまざまなポーズで絵を描く

グループでのワーク

絵にテキストをつける



冊子を使ったエクササイズは続きます。

次に行ったのは紙を一切見ずに絵を描くワークです。鉛筆などの陰影のでる画材を使ってリラックスした状態の自分の手を描いたあと、近くに座っている人と二人組になり、お互いの顔を描きます。参加者の方はイラストレーターやデザイナーなど絵を描く仕事をしている方がほとんどですが、普段とは異なる描き方に皆さんはそわそわしながらも、すぐに作業に取り掛かります。
ハリエットさんは対象をよく観察しながら、そこにある細かなフォルムもくまなく描くようにと話します。じっと自分の手や、向かい合っている相手の手を見て描いていても、できあがるのは思いもよらない線やかたちです。できあがったものについて「自分で描いた絵ではないみたい」という声も聞こえました。
ここで生まれたふたつの絵にも文章をつけていきます。手と人の絵は同じ見開きのなかに描かれており、そこに自分自身の悲しかったり辛かったことを書き入れていきます。絵とは直接関係のない文章を組み合わせると、自分が思っていたものとは違ったものが立ち現れてくると話すハリエットさんは、このエクササイズのとき「絵と文章の組み合わせ」について何度も言及していました。

次は、ティーカップ、帽子、バナナ、そして自身の好きなものという4つのオブジェクトを、少しずつ形を変えて描き、別のオブジェクトにするというワークを行いました。例えばティーカップだったものが女の子になったり、帽子だったものがくらげになったりします。絵ができたら、その絵につける詩や歌詞のような文章をつくります。何人かの参加者が制作物を発表してくださいましたが、まったく関係のなさそうだったものから、思いがけない物語が生まれている様子を見て取ることができました。

紙を見ないで自分の手を描く

相手の顔を紙を見ないで描く

変化していく絵


昼食後、ハリエットさんは3日間のワークショップの終わりに絵本を一冊制作することを参加者に伝えます。そのための作業として、ふたつの文章を書くようにおっしゃいました。ひとつは自分でとっておくもので、自分にとって悲しかったり辛かったりする経験を書き、もうひとつは参加者の誰かにあげるもので、自分にとってすごくよかった、嬉しかった経験を書くというものです。

この文章は翌日以降に使用するとのことで、1時間ほどその作業を行った後は、1時間ほどのエクササイズに入りました。ワークショップが行われている講義室の壁を遊び場として、さまざまなものを制作し貼っていきます。
この日だされたお題は3つ。「もしあなたが野菜か果物なら一体なに?」「あなたのお父さんかお母さんが乗り物だったら、どんな乗り物?」「自分の一番愛する人が動物だったら、どんな動物?」。

それぞれその問いかけに対して、画用紙に絵を描いたり、さまざまな素材をつかってコラージュしたり、はたまた立体物をつくったり。作品を貼る時はそのコンポジションを意識してね、とハリエットさんは伝えます。その声を受けて、他の人の作品とコラボレーションするように作品を貼ってみるなど、別々につくられたものたちが壁面上で少しずつ関係ができていくのが見られました。この時間は明日以降も設けられるとのこと。3日目には一体どんな様子になるのでしょう!

自己紹介もなくはじまった怒涛の一日目。はじめは緊張も感じられましたが、ハリエットさんの自由な発想で生まれたさまざまなワークに、参加者の皆さんが早速刺激を受けている様子が伝わってきました。
一冊の絵本づくりに向けて、明日明後日とワークショップは続きます。一体どんなことを行うのか、明日も楽しみです。

作業を行う人々

壁に大きな機関車の絵をはる

壁に貼られた作品たち