2024年7月9日 夏のアトリエ1日目

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ページ番号4001891  更新日 2024年7月10日

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ボローニャ展恒例の「夏のアトリエ」が始まりました!イラストレーター向けワークショップとして1998年に始まり、もう24回目となります。今回の講師は、アルゼンチン出身でスペイン在住のイラストレーターで作家のグスティさんです。2023年ボローニャ展の審査員もされました。グスティさんのことは、ダウン症をもって生まれた次男のマルコさんとご自身を描いた絵本『マルコとパパ』(日本語版:宇野和美訳、偕成社刊)を通してご存じの方が多いのではないでしょうか。マルコさんの誕生から、彼を受け入れ、家族とともに一緒に過ごす日々を描いたこの絵本は、2016ボローニャ・ラガッツィ賞バリアフリー絵本部門で受賞しています。グスティさんは、イラストレーター・作家として絵本を制作しながら、「WIndown」という協会を設立し、ダウン症の人たちとアートを通して活動をされています。今回、グスティさんは妻のアンさんとマルコさんとともに来日されました。

夏のアトリエも”インクルージョン”がテーマ。参加したイラストレーターやデザイナーたちも、この言葉にひかれて集まってきてくれたようです。東京や関東近郊だけでなく日本各地・海外在住の参加者たちの中には、障害をもっている人たちと仕事や生活をした経験があったり、幼稚園や学校で多様な子どもたちと関わる活動をしていたりする方々も含まれています。絵本を作りたいという思いとともに、インクルージョンに関心があるという共通点をもった20名の参加者たちとのワークショップが始まりました。
グスティさんは前日の打ち合わせの際に、まっさきに机の並びを学校のようなスタイルではなく、いくつかの机を島にしてランダムな配置に変えました。そして、このワークショップでは、イラストレーターの絵がうまくなることを目指しているのではなく、この日々を経験し、描くことが彼らの癒しとなってほしいという思いを語ってくれました。
1日目の朝、グスティさんはご自身の自己紹介を済ませると、ワークショップの前にいつもやっていることとして、「7つの方向の精霊たちに挨拶をしましょう」と言って、みんなで立って手を上に挙げて、東・南・西・北・天・地、そして自分の心に向かって「ありがとう」と言いました。「!?」と思った方もいたかもしれませんが、自然とこのアトリエの方向性にみなさんが促されていきました。
次に目をつぶり、呼吸し、目をあけて、そのときにぱっと思いついた動物を書きだしました。参加者全員にその動物を聞いたグスティさんは、それらは「トーテムアニマル」として、このアトリエ中もこれからのみなさんの人生にも付き添ってくれると言います。(グスティさん自身のトーテムアニマルは鷲なのだそうです。)
このアトリエの最初のエクササイズは、それぞれのトーテムアニマルをコラージュで制作し、説明を付けるというもの。トーテムアニマルを変えてもいいのか、という質問がありましたが、グスティさんはそれぞれの動物があなたたちのところにやってきてくれたのだから、できれば変えずに、コラージュは普段やっていないとしても、うまく描くのが目的ではないから経験としてやってみてほしい、と言いました。そこからは、みなさん様々な素材を選んでコラージュ切ったりちぎったり貼ったり。でも、会場にはいつも音楽が流れていて、静まり返ることもなく、グスティさんの提案で座ってばかりいないで立ったり動いたりしながら制作をしていると、自然に参加者同士の会話も生まれ、部屋全体があっという間にあたたまり、参加者たちのテーブルは小さなアトリエと化していきました。
ランチを挟んで次の課題は、持ち物としてみなさんが持参した「宝物」の絵を描くというもの。子どものころから大切にしていたぬいぐるみ、縄文土器のかけら、自身の家族にまつわるもの...さまざまなまものを取り出して、制作が始まりました。そして、会場には「マルコとパパ」の翻訳者である宇野和美さんも駆けつけてくれて、グスティさんの新作絵本を紹介してくださいました。そこには、やはりみんなが違うということ、そして多様な仲間を認め合うことが描かれていますが、グスティさんはそれを楽しくユーモラスに伝えたいとおっしゃっていました。
そうこうしていると、グスティさんが参加者の持ってきた楽器を鳴らし、部屋の中を歩きながら歌いだしました。それにあわせて参加者やスタッフたちも歌ったり拍子をとり、部屋中が(そして館内中が)音楽で満たされました。
それぞれが宝物をテーマにした絵を描き、何人かに発表をしてもらって1日目は終了となりました。この日の最後には、たとえ制作に行き詰ったとしても、かならず「天使」が下りてきてそれぞれを助けてくれるよ、とみんなを励ましてくれたグスティさんでした。(グスティさんも大変な事態に直面したときに助けてくれた人たちが「エンジェル」という名前だったのだそうで、そんなエピソードも紹介してくれました。)
今回のアトリエでは、自分のアイデンティティを探るようなことをしたいというグスティさん。明日はどんなことをするのか、いまから楽しみです!!
そういえば、参加者の自己紹介もしないまま始まった夏のアトリエですが、すでに室内は和気あいあいとした雰囲気です。

イベント風景1

イベント風景2

イベント風景3

イベント風景4

イベント風景5